女性スキャンダルでもめげなかった中川秀直、山崎拓の執念
政治家の女性スキャンダルですぐに思い出すのは、宇野宗佑、中川秀直、山崎拓であろう。宇野はスキャンダルもあって、あっという間に総理の座から滑り落ちた。なかでも愛人に衝撃的な告白をされたのは山拓であろう。そのうえ、愛人が外国特派員協会で記者会見まで開いてしまったのだ。将来の首相候補だった山拓は落選し、その後も出馬するが当選する可能性はほとんどなくなった。だが、私が彼の元愛人にインタビューのため博多へ行ったとき、彼女は「まだやる気満々ですよ、あの人」と笑って話してくれた。
宇野、中川、山崎は自殺せず、中川は衆院議員としていまだに永田町で大きな顔をして生き延びている。彼らと松下金融担当相を分けたのは何だったのか。時任の模泰吉弁護士がいっているように、「松下氏の女性の扱い方がヘタだったと言われても仕方ない」ところはある。セックスのテクニックやテレホンセックスのことをバラされ、晩節を汚されたと思ったのかもしれないが、「その歳でようがんばってはる」という見方もあるのではないか。
私は自殺の動機は政治家という職業にあると思う。かつての自民党実力者・大野伴睦は「猿は木から落ちても猿だが政治家は選挙に落ちればタダの人だ」といった。総選挙は間近であるが、落ち目の民主党と手を組んでいる松下が所属する国民新党も苦戦が予想されている。ましてやこのスキャンダルが出て、当選する見込みはほとんどなくなった。
中川、山拓にはもう1度永田町に戻るという強い意欲があったが、松下にはもともとそれが弱かった。このスキャンダルが明るみに出てしまうことで、生きる意欲まで失ってしまったのではないか。政治家には不向きな人だった思う。タダの人に戻るのが怖かったのではないか。週刊誌の記事が引き金になって起きた悲劇は、週刊誌の現場や私のようなOBにまで重い問題を突き付けた。