人間に備わった心理的な自衛作用。親しい人と繋がって安心して迎える死
終末医療専門の東大名誉教授・大井玄医師も「お迎え」体験者が4割という数字は「不思議ではない」と次のような指摘をする。
「日本では8割が病院で死んでいきますが、病院ではそういう体験は起こりにくいんですね。安らかで安心できるところでよく起こるものだと思う。病院というのは終末期の人にとって異界みたいなところで、自然なところは自宅や終の棲家といえる老人ホーム、そういうところで4割はおかしくないと思います」
国谷裕子キャスター「なぜ終末に近づいている人に起こるとお考えですか」
大井医師「おそらく人間に備わった心理的な自衛作用で、親しい人と繋がったという感じでみな安心するわけです。子どもの時にお母さんに『大丈夫だから』とさすってもらって痛みがなくなったように、親しい人が来てくれたというのは精神的な苦痛をなくすには非常に効果的です」
となると、医療の進歩がもたらした過剰なほどの延命治療は、むしろ死と自然に向き合う人間に備わった自衛作業には妨げでしかないのか。
大井医師「死を遠ざけることによって恐怖を強くしている。いま求められているのは自然のままの死を見直す作業でしょう。一人ひとりが家族を看取る場を作っていかないとまずい。子どもに実際にその場にいて看取らせることも必要だと思います」 高齢化の進展の中で、亡くなる人の死への不安感をどうカバーするか。家族が真剣に考える時代に来ている。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2012年8月29日放送「天国からの『お迎え』~穏やかな看取り(みとり)とは~」