主人公の感情を丁寧に描いていれば傑作になり得た凡作
画の力や宮崎あおいの演技のおかげで序盤から観客が置いていかれてしまうという失敗は免れているが、狼男という非現実な人種を観客に受け入れさせなければならないという意識があれば、もう少し丁寧に描くべきだったのではないか。
前半部分に限ったことではなく、全編を通してどこかあっさりとしている。クライマックスにも花とある人の別れが待っているのだが、その受け入れ方も非常に簡単だ。花と男との出会いから雨と雪が成長するまでの約15年間を焦って2時間にまとめてしまっているという印象を受けた。大自然の画力、豪華俳優陣の演技など目を見張る点が多いだけに、もう少し主人公の感情を丁寧に描いていれば『時をかける少女』、『サマーウォーズ』にも勝る傑作になり得た作品だった。
野崎芳史
おススメ度☆☆☆