何とも不愉快な映像だった。昨夜16日(2012年8月)に那覇港で巡視船から降ろされた中国人が叫んでいた。「日本軍国主義打倒」「尖閣を返せ」「日本は尖閣から出ていけ」。白髪まじりもいる。彼らが子どもの頃には尖閣の名前すら知らなかっただろうに。
中国政府にとっても「迷惑な連中」
尖閣諸島の魚釣島へ不法上陸したとして入管難民法違反で逮捕された中国人14人の身柄は入国管理局へ移された。政府はきょうにも全員を送検せずに強制送還するものとみられる。この問題では、政府は自民党時代から一貫して中国を刺激しないように処理してきた。2004年の活動家の上陸のときの小泉首相、10年の漁船衝突事件のときの菅首相も不起訴・釈放している。
それにしても、なぜ何隻もの巡視船がいながら、たった1隻の侵入を阻止できず、5人を上陸させ、中国と台湾の国旗まで持ち込ませてしまったのか。こんなことでは、中国漁船が大挙してやってきたらどうなるのか。それでなくてもいま、石垣の漁民は「怖くて」この海域では操業できなくなっている。
漁船衝突事件の映像を公開したことで、海上保安官を辞めた一色正春氏は、「こうした特例措置には理由がない」と取り締まりに当たる現場の空気をいう。少なくとも送検はすべきだというのである。「日本人がどこかの国の島に不法に上陸したことを考えればわかる」と話す。
中国ウォッチャーの富坂聡氏は、強硬ではなくソフト警備をとったのは「及第点」だという。むしろ、まともに扱う相手ではないと指摘した。中国政府もこの船の問題にエネルギーを使おうとは思っていないという。
海保・警察の作戦通り!海上で誘導して「御用!」
「モーニングバード!」がヘリから見た一部始終を、東京都の尖閣担当専門委員の東海大の山田吉彦教授が分析した結果が面白い。巡視船は8隻以上いたが、中国船を阻止するのではなく、特定の場所に誘導していたという。たしかに、陸で待ち構えた警察官らの真ん前に着岸していた。つまり、入管法違反だけで強制送還というスピード決着をにらんだものだったという。それは中国政府の思惑にも合致する「顔が立つ決着になる」と山田教授は見る。
一色も「止められないはずはない。待ち構えてる反対側に上陸されたら困るからシナリオ通りだろう」という。
赤江珠緒キャスター「あえて上陸させたということですか」
一色「だれが決めたのか、客観的にそう見えますね。結果として日本側は止められず、一時的にも侵入を許して、国旗を掲げた映像が世界に流れたのはまずいと思う。今後、ステップアップも考えられます」
司会の羽鳥慎一「今後もつかまえられない状態は続くのか」
一色「腹ひとつです。尖閣は日本の領土だといってるのに、どうしようかということ自体おかしなこと。議論の余地は ないと思う」
富坂は「衝突事件以降、いくつか設定した選択肢のひとつだと思う。いま海では安全装置がないので危なっかしい。 そんな中では、100点ではないが、及第点だと思う」という。
この問題ではだれもシナリオを描けない。東京都の動きが今回の騒動を誘発したという面もある。一色氏は「普通の領土として扱えばいい。実行支配しているのだから」という。確かに、だれでも上陸できるのが常態になれば違ってくるかも知れない。触らぬ神に……では、いつまでもこういう状態が続くことになる。