リュック・ベッソンが描く「アウンサンスーチー」軍政から逃げないことで貫いた夫への愛

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(C)2011 EuropaCorp – Left Bank Pictures – France 2 Cinéma
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The Ladyアウンサンスーチー 引き裂かれた愛>1988年、アウンサンスーチーはロンドンでイギリス人の夫マイケルと2人の息子と暮らしていた。そこに故郷ビルマのラングーンで暮らす母親が病に倒れたという知らせが入り、見舞いのため帰国することになった。1週間で戻るつもりだったが、それっきり戻ることはできなくなってしまった。

出国したら夫婦で続けてきた民主化活動の意味が失われてしまう

   スーチーを演じたミッシェル・サナが脚本を読み、すぐさまリュック・ベッソンに映画化をすすめたのだという。独特の感性で映像世界を作り上げていく個性派監督が、アウンサンスーチーの半生を描くというのは、ベッソンファンにはイメージしにくいだろうが、映画は純度100%のリュック・ベッソン作品に仕上がっている。

   ビルマ建国の父であり、スーチーの父親でもあるアウンサン将軍は、彼女が幼いころに民主化反対勢力に殺された。帰国したスーチーの目に飛び込んできたのは、軍人による民衆への暴力であった。民衆は運動の先頭に立つリーダーを求めており、スーチーが帰国したことを知った民主化リーダーたちはスーチーを訪ねる。建国の父の娘が民主化運動の代表者になるのは「運命」であった。

   夫もスーチーの運動を応援するが、軍事政権の妨害にあい、ビルマ入国を許可されず、電話の会話も妨害をされるる。やがて夫は病に倒れてしまった。2人が引き裂かれていく過程を、ベッソンはていねいに描き、作品は主題を表していく。ベッソンは『ニキータ』の暗殺者とスーパー従業員、『フィフス・エレメント』の救世主とタクシー運転手のような、住む世界が違うことで隔てられた人間が、生命を躍動させ「ひとつ」になっていく過程を描いてきた。スーチーは理不尽な弾圧によって夫と引き離され、夫の死に立ち合うことも叶わなかった。病の夫に会いに行くことは可能だったが、1度出国したら再入国は拒否される。それは夫に支えられてきた今までの活動の意味を失うことでもあった。

   スーチーが髪に付ける花飾りが印象的に撮られている。運命によって指導者になった女性ではなく、そこには花の似合う美しい一人の女性が立っていた。

川端龍介

オススメ度☆☆☆☆

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