吉田沙保里(29)が女子レスリング55キロ級決勝を見事に決めた。五輪3連覇で、決まった瞬間、吉田は試合をずっと見守ってきた栄和人監督を嬉しさのあまりマット上に投げ伏せ、父親を肩車に喜びの雄叫びをあげた。
「霊長類最強の女」が乗り越えた2つのヤマ
「霊長類最強の女といわれる吉田がレスリングを始めたのは3歳の時だった。全日本王者の父・栄勝が自宅を改造して開いていたレスリング道場で手ほどきを受けた。それから26年間、父子で歩んできたレスリング人生だが、越えねばならない大きなヤマが2つあった。
吉田の最大の武器は高速タックルである。叩き込んだのは父だったが、2008年のW杯団体戦で、格下の選手にこの高速タックルを封じられ連勝記録が119でストップした。
失意の吉田を救ったのはやはり父だった。どうしたら外国選手を脅かすタックルができるか。相手も研究している高速タックルの精度にさらに磨きをかけることになった。そして生まれたのが、素早く回り込んで相手の片足をタックルする「高速片足タックル」と、距離を置く相手にはさらに早い電光石火の高速タックルだった。
もう一つのヤマは、ロンドン五輪まであと2か月という国別対抗戦準決勝で、ロシアのドロボワ選手に負けてしまったことだ。自信をなくし、これを乗り越えるために、試合会場で父がセコンドにつくことを特別に認めてもらった。
このまま勝てれば、リオ五輪もやってやろうじゃないの
オリンピック予選は順調に勝ち進み、準決勝で当たったのはあのドロボワ選手だった。「緊張した」らしいが、2―0で圧勝してきっちりリベンジをはたした。決勝では「高速片足タックル」が決まり3連覇達成となった。
吉田は「負けを知って、あれからまた強くなったかな。最高の舞台で、(父を肩車に乗せ)ああやって最高の形で終えられたことは幸せです」と汗びっしょりで語った。次の五輪については、「このまま勝てればやってやろうじゃないのという気持ちになっている」という。
キャスターのテリー伊藤「最強です。確実に国民栄誉賞ものです。柔道や相撲はすぐ(栄誉賞が)出るが、同じ格闘技でもレスリングやボクシングはなかなか出ない。ぜひお願いします」