まあ、オリンピックではなんで起こる。柔道男子66キロ 級の海老沼匡(22)は準決勝で敗れたが、3位決定戦に勝って銅メダルを獲得した。その前の準々決勝での判定をめぐって混乱が起きた。いったん相手選手に3本の青旗があがって勝ちと判定されたが、これが覆ったのである。
韓国選手に旗3本!ジュリーがクレーム
準々決勝の相手は韓国のチョ・ジュンホ選手で、試合は延長戦でも決着がつかず判定になり、 主審と副審2人はチョ選手優勢の青旗をあげた。これに日本の篠原信一監督がはげしく抗議し、観客からもブーイングが起こる。審判委員(ジュリー)からクレームがつき、再度の判定は海老沼選手勝ちの白旗3本だった。
延長に入って海老沼の技に主審が「有効」を出したときにも、ジュリーからクレーム がついた。「有効」だと試合が終わるが、これを取り消して試合続行。海老沼優勢のうちに終わっていたが、審判3人の旗はチョ選手にといういきさつだった。この五輪の柔道ではジュリーの指導がやたら目立つ。過去の誤審への反省からシステムを変え映像も参考にする。それはいいのだが、見ていて、主審、副審の陰が薄く見えるのは困ったものだ。
「せっかくもらったチャンスを力不足」で一本負け「銅」
ともあれ海老沼は準決勝に進んだのだが、あっけなく負けてしまう。世界選手権王者とは思えない結果だった。3位決定戦では豪快な一本勝ちを見せたが、いかにも遅い。ロンドンのスタジオにいる海老沼と師匠の吉田秀彦氏に司会の羽鳥慎一がいろいろ聞くのだが、いまどきの若者にしては珍しく口が重い。「金メダルを目指していたのでくやしい」。吉田も「本人が一番納得していない。ちょっと油断するとこうなる。これがオリンピック」という。バルセロナの金メダリストだ。
問題の判定が覆った件を聞くと、「自分は勝ったと思っていた。判定には複雑でした。 せっかくもらったチャンスを力不足で…」と、やっぱり話はそっちへいってしまう。終わりごろになってようやく笑顔を見せたので、羽鳥が「やっと笑顔になった。帰ったら何をしたいですか」と聞くと、「ごはんをいっぱい食べたい」
誤審の問題では、篠原信一現監督がシドニー五輪で、金のはずの一本が認められず銀メダルになった判定があった。当時の山下泰裕監督らが抗議したが覆らなかった。選手だった篠原は「自分が弱いから負けた」としかいわなかった。この判定が審判のシステムを変える契機にもなっている。海老沼の判定では、コメンテーターの石原良純(タレント)らもいろいろ口をはさんでいたが、この間、だれもシドニーの話を口にしなかった。もう覚えていないのか。シドニーからわずか12年 なのに。