自分はだれよりも美しくあるべき
監督の蜷川の趣向だろうか、りりこをとりまく世界のビジュアル化がとにかく手が込んでいる。鮮烈な色を放つ映像に、これでもかと大音響の音楽が流れ続ける。それに合わせ、りりこに幾度となくカメラのフラッシュが当たる音が重なる。ただ、そこに力を入れ過ぎていて少しくどい。りりこの撮影シーンばかり多いのも気になるが、この映画の最大の売りは「沢尻エリカ」という女優なのだろう。
誰よりも美しくありたいと望む全身整形のカリスマりりこは、他人には暴君のように振る舞い、自分を脅かす者は手段を選ばず潰しにかかる。どんな男にも抱かれ、さらには女マネージャー羽田とも一線を越える。そんなりりこの存在感に、他の共演者は霞んで見える。ただ1人、羽田を演じた寺島しのぶのは光って見えた。地味で化粧もしない中年女の多田は、純粋にりりこの美しさに憧れ、尽くす。恋人を寝取られSMプレイを強要されても、「私がいないと何もできないの」とりりこを助けようと全力だ。
後遺症から薬や酒におぼれ幻覚や妄想
物語の終盤から、整形の後遺症に蝕まれ壊れていくりりこ。後遺症の痛みから逃げるため薬や酒を乱用し、幻覚や妄想に取りつかれる。この瞬間の沢尻エリカの演技は素晴らしい。バストトップまで露わにした激しい濡れ場もさることながら、堕ちていくことの恐怖「きれいじゃなくなったらみんなに忘れられる」という、りりこの叫び声には圧巻である。
はい上がろうともがき苦しむりりこは、沢尻エリカ本人のように見える。中身はしっちゃかめっちゃか(ヘルタースケルター)で、外面は完璧な美貌を誇るりりこを演じられるのは、沢尻エリカの他にいないだろう。
PEKO
おススメ度:☆☆☆