東電「緩やかな殺人罪」福島原発現場の陰湿―社員は除染オフィス、作業員は高線量要員

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線量計「鉛カバー偽装」も知ってて黙認?

   7月21日付(2012年)の「朝日新聞」が衝撃的なスクープを放った。

「東京電力が発注した福島第一原発の復旧工事で、下請け会社の役員が昨年12月、厚さ数ミリの鉛のカバーで放射線の線量計を覆うよう作業員に指示していたことがわかった。法令で上限が決まっている作業員の被曝(ひばく)線量を少なく見せかける偽装工作とみられる」

   役員は作業員たちにこう言い放った。

「年間50ミリシーベルトまでいいというのは、原発(で仕事を)やっている人はみんな知っている。いっぱい線量浴びちゃうと、年間なんてもたない。3カ月、4カ月でなくなる。自分で自分の線量守んないと1年間原発で生活していけない。原発の仕事ができなかったらどっかで働くというわけにはいかねえ」

   作業員の被曝限度は「年間50ミリシーベルト」などと法令で定められている。被曝限度を超えれば原発では当面働けない。さらに役員はこう続けた。

「線量がなくなったら生活していけねえんだ。わかる? 50ミリがどんどん目減りしていくわけだから」

   あきれ果てるが、こうした被曝線量を低く偽装することは相当前から行われていたと思われる。東電側も知っていて黙認していたのではないだろうか。

「熱中症・脱水症」で倒れても医務室行くと「お詫び書類」提出

   「週刊朝日」が福島第一原発の作業員として働いているジャーナリスト桐島瞬のルポ「東電を『殺人容疑』で告発する!」を掲載しているが、そこにはこういうエピソードがある。7月初めにフクイチ免震重要棟の2階に大型冷蔵庫が運び込まれた。この日は就任したばかりの下河辺和彦東電新会長と廣瀬直己新社長が視察に訪れた日だった。冷蔵庫の中にはペットボトルに入った水が大量に冷やされ、東電社員がいつでも飲めるようになっていた。しかし、作業員たちが詰める1階には冷蔵庫もなく、生ぬるい水を飲んでいるのだ。

   たかが水だと思ってはいけない。夏の作業を迎えて作業員たちは放射性物質とは別の「熱中症」や「脱水症」とも闘わなければならないのだ。防護服を着ていることで気温プラス5度。全面マスクでプラス5度。それに放射線防護用のカッパを着たら一気にプラス10度。30分以上の連続作業は無理だ。昨年は23人が熱中症で倒れたが、その何十倍もの作業員が熱中症にかかっただろうと桐島はいう。大事になるのを恐れて医務室に行かない作業員が多いからだ。なぜなら、熱中症患者を1人でも出せば、作業員が所属する企業は東電に丁寧な「お詫び」の書類を作り、対策を講じなければならない。

   さらに、免震棟は放射性物質で汚染されたため管理対象区域として扱われてきた。今年4月、その一部を非管理区域に変更した。徹底的な除染をしたため基準を下回る汚染レベルになったと世間には知らせた。床から1・5メートルの平均線量は1月10日に1・59マイクロシーベルトだったものが、5月22日には0・43マイクロシーベルトまで下がったのだ。

   だが、ここに「さすが東電」といいたくなるようなごまかしがあるという。発表資料には「一部」とある。その一部とは免震棟の2階なのだ。徹底的な除染をしたのは東電社員の専用スペースの2階だけで、「免震棟の1階に1~2時間いるだけで、約0・03ミリ被曝します。1ヵ月に20日間働くと約0・6ミリ、1年で7・2ミリシーベルトも浴びてしまう計算です」(放射線管理員)

   報じられていないが、今年5月に汚染水浄化用のホース交換作業現場で毎時4000ミリシーベルトのベータ線が検出され、知らずに作業をしていた数人が一瞬で5ミリシーベルト以上を浴びるという出来事があった。

   桐島によると、今年5月までフクイチで働いた作業員は2万2000人を超え、この中の一人は678ミリシーベルトという途方もない放射線を浴びた。20ミリシーベルト以上の被曝者は4000人を超え、全体平均の被曝量は11・84ミリシーベルトになるという。こう結んでいる。

「東電に告ぐ。あなたがたがしていることは、緩やかな殺人罪といってもいい。政府は収束作業に当たる作業員に対して、生涯にわたる医療支援体制を早急に作るべきだ」

   その通りである。

文科省の放射線量隠し争点―線量計設置業者が提訴

   朝日新聞ばかりで恐縮だが、7月26日付で注目される裁判が始まったと報じている。「福島県内の学校や公園などに放射線量計を設置する契約を国と結んだ業者が不当に契約を解除されたとして、国に約3億7000万円の支払いを求める訴えを東京地裁に起こした。 この業者は『アルファ通信』(東京都中野区)。訴状によると、同社は入札を経て、同県内の600カ所に線量計を設置する契約を昨年8月に約3億7000万円で文部科学省と結んだ。

   その後、設置を進める途中で文科省が『測定値が正確でない』などと改善を指示。納入期限を約1カ月延ばしても線量計の改良が間に合わなかったとして、文科省は11月に契約を解除した。同社は『突然の設計変更を求められたうえ、不合理な納入期限を押しつけられた』と契約解除の無効を主張している」

   この日、文科省側は答弁書を出してこなかった。この裁判で真に争われるのは、文科省のやっている放射線量を低く発表する「線量隠し」の実態と、文科省とつるんでいる線量計メーカーとの癒着構造である。

JAL「利益なくして安全なし」燃料節約で台風突っ切るパイロット

   このところすっかり文春の陰に隠れて目立たなくなっている「週刊新潮」だが、今週はJALの再上場に異議ありと、新潮らしい切れ味を見せている。JALが会社更生法の適用を申請したのが2010年1月。それが今年3月期には2049億円の営業利益を出したのだから、JALの名誉会長になった稲盛和夫は評価されていいはずだが、そうではないと異を唱える。

「稲盛さんの経営哲学の下、日航では、すべてに優先して絶対安全、という方針が弱まってしまいました」(共産党の穀田恵二代議士)

   稲盛の「利益なくして安全なし」というイズムが浸透して、安全が脅かされているというのだ。その例を穀田代議士はあげる。昨年の台風シーズンのとき、機長が台風は迂回すれば避けられるが、そうすると30分ほど余計に時間がかかり、燃料費が20万円余計にかかってしまうから台風を突っ切っていくと発言したというのだ。

   今年1月には旭川発羽田行きの便の機長が、空港で点検中に転倒して肋骨を折りながら、そのまま羽田まで操縦したこともあった。航空業界に詳しいジャーナリストはこう語る。

「この機長は管理職で、稲盛さんの利益第一主義を進めてきた立場の人。自分がケガをしたせいで欠航になれば赤字になるから、休むと言い出せなかったのではないでしょうか」

   パイロットはその日の機種や客が何人搭乗して燃料費にいくらかかるかを事前に知らされる。そこから利益を捻出しなければと考えるパイロットが増えたために、燃料費を抑えようと、台風に突っ込んでいく飛行が出てくるというのだ。恐ろしいことではないか。

   また、CA(客室乗務員)もただのセールス要員だと元CAが嘆く。「CAにはフライトごとに『セールスターゲット目標額』が課され、羽田―沖縄便ならCA一人につき往復4000円。(中略)みなノルマをいかに達成するかで頭が一杯で、接客どころではありません」

   国際線ではもっとノルマがきつく、一人当たり3万2400円にもなるという。

   パイロットは年収がいいと思われてきたが、破綻前が1700万円から1800万円、2000万円を超えるのもいたが、今は1200万円から1500万円だという。

   驚くのは、整備員が希望退職で約2000人も辞め、今は下請けに丸投げされていることである。それをカバーしているのは中国の厦門(アモイ)にある工場で、そこへ一括して依頼しているというのだ。

「しかし、日航が世界に誇れる整備等の技術面が、このままで大丈夫なのか。信頼性が低下しないでしょうか」(国土交通省航空局の関係者)

   新潮のいうように、「安全を疎かにすると、いかに巨大なコストにつながるか、東京電力という反面教師がいるではないか」

   いやはや、JALに乗るのが恐ろしくなる記事である。

【特別付録】安うま味酒覧 秋葉原AKB60の聖地「赤津加」で穴子照り焼き、ほたてかき揚げ…

   秋葉原の電気街口を出て左折、中央通りを渡ると、メイドたちの可愛い声に出迎えられる。電気街のメイド喫茶が林立する中に、奇跡のように残っている2階建ての居酒屋が「赤津加」だ。昭和29年開店だそうである。かつて花柳界だった雰囲気を残す少し傾いたカウンターや小上がり。6時半に予約しておいたが、われわれの所だけが空いているだけで、次から次に訪れる客たちは中を覗いて渋々帰って行く。

   まずはビンビールで乾杯し、穴子の照り焼きとほたてのかき揚げ、鶏もつ煮込みを頼む。AKB48の聖地と化したアキバだが、ここだけはわれわれオジンの聖地。子供は出入り禁止のR-20酒場、いうなればAKB60(歳)ですな。居酒屋探訪家・大田和彦が「往年の居酒屋の典型として登録文化財に指定すべき!」だと書いているが、その通りである。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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