JAL「利益なくして安全なし」燃料節約で台風突っ切るパイロット
このところすっかり文春の陰に隠れて目立たなくなっている「週刊新潮」だが、今週はJALの再上場に異議ありと、新潮らしい切れ味を見せている。JALが会社更生法の適用を申請したのが2010年1月。それが今年3月期には2049億円の営業利益を出したのだから、JALの名誉会長になった稲盛和夫は評価されていいはずだが、そうではないと異を唱える。
「稲盛さんの経営哲学の下、日航では、すべてに優先して絶対安全、という方針が弱まってしまいました」(共産党の穀田恵二代議士)
稲盛の「利益なくして安全なし」というイズムが浸透して、安全が脅かされているというのだ。その例を穀田代議士はあげる。昨年の台風シーズンのとき、機長が台風は迂回すれば避けられるが、そうすると30分ほど余計に時間がかかり、燃料費が20万円余計にかかってしまうから台風を突っ切っていくと発言したというのだ。
今年1月には旭川発羽田行きの便の機長が、空港で点検中に転倒して肋骨を折りながら、そのまま羽田まで操縦したこともあった。航空業界に詳しいジャーナリストはこう語る。
「この機長は管理職で、稲盛さんの利益第一主義を進めてきた立場の人。自分がケガをしたせいで欠航になれば赤字になるから、休むと言い出せなかったのではないでしょうか」
パイロットはその日の機種や客が何人搭乗して燃料費にいくらかかるかを事前に知らされる。そこから利益を捻出しなければと考えるパイロットが増えたために、燃料費を抑えようと、台風に突っ込んでいく飛行が出てくるというのだ。恐ろしいことではないか。
また、CA(客室乗務員)もただのセールス要員だと元CAが嘆く。「CAにはフライトごとに『セールスターゲット目標額』が課され、羽田―沖縄便ならCA一人につき往復4000円。(中略)みなノルマをいかに達成するかで頭が一杯で、接客どころではありません」
国際線ではもっとノルマがきつく、一人当たり3万2400円にもなるという。
パイロットは年収がいいと思われてきたが、破綻前が1700万円から1800万円、2000万円を超えるのもいたが、今は1200万円から1500万円だという。
驚くのは、整備員が希望退職で約2000人も辞め、今は下請けに丸投げされていることである。それをカバーしているのは中国の厦門(アモイ)にある工場で、そこへ一括して依頼しているというのだ。
「しかし、日航が世界に誇れる整備等の技術面が、このままで大丈夫なのか。信頼性が低下しないでしょうか」(国土交通省航空局の関係者)
新潮のいうように、「安全を疎かにすると、いかに巨大なコストにつながるか、東京電力という反面教師がいるではないか」
いやはや、JALに乗るのが恐ろしくなる記事である。