「お尻だって洗って欲しい」というキャッチコピーで一気に普及したTOTOの洗浄便座・ウォシュレットを、日本機械学会が機械遺産に選んだ。現在、ウォシュレットの家庭普及率は7割に達している。「週刊人物大辞典」コーナーでウォシュレットの技術者たちの苦労を取り上げた。ウォシュレットの家庭普及率は7割にも達しています
TOTO社員に「穴の位置調べさせてくれ」
北九州市のTOTO本社を取材した司会の羽鳥慎一は「機械遺産とは庶民の生活向上や社会に貢献した価値ある機械を選ぶもので、これまでに駅の自動改札機なども選ばれています」と説明した。TOTO技術者の飯田雅巳氏や田中弘志氏らがウォシュレット開発を命じられたのは今から34年前だった。それまでTOTOは痔の患者向けの医療用洗浄便座を販売していたが、高額で評判も芳しくなかった。
田中「開発しろといわれても、お尻の穴の位置は人によって違う。また、穴の位置に関するデータもどこにもなかった」
田中と飯田は社員に穴の位置データ採取の協力を要請したが、「そんな恥ずかしいことができるか、他の人を当たってくれと最初は拒否されました」と言う。
羽鳥慎一「それでも何度も頭を下げて頼み込み、4か月後に300人分のデータを集めたそうです。しかし、新たな問題が発生しました。温水の噴射角度と温度です。そして便座の温度でした。その黄金率を見つけるために、2人は交代で1日16時間も便座に座り続けたそうです」
日本だから生み出せた技術者の細やかな心配り
コメンテーターの藤巻幸大(カリスマバイヤー)は「いまやウォシュレットはトイレの神様といえる存在。それが世に出るまで、そんな苦労があったのか」と舌を巻いた。長島一茂(スポーツキャスター)が「ウォシュレットは日本独自のもの。どうして世界に普及しないのか」と首を傾げると、吉永みち子(作家)は「日本の技術者にはいいものを作りたいという細やかな心配りがある。それが日本ならではのウォシュレットを産み出したのでしょう」と語った。ウォシュレットはいま世界中に急速に普及しているが、高級ホテルやレストランが中心で、家庭ではまだまだ少ない。