「俺の給料3600万だよ、たったの。ふざけんなよ。後援会に私費ぶっ込んでんだよ」
野田が96年に落選したときに支えたのも寒竹で、野田の秘書達の面倒も見ていた。当人はこの疑惑にどう答えるのか。医療グループのトップにいる人間にしてはこの御仁、いささか柄が悪い。訪問医療を始めた理由はと聞かれ、「金を儲けたいから。当たり前だよ。だけど、やっているうちに、価値観がだんだん変わるんだよ。本当に世の中のためになりたいと」と答えるが、本当はそんなに診療していないのに20分診療したことにして高い保険点数を請求していますが、と追及されると口調が変わった。
「ウチの平均診療点数は九百、全国平均よりかなり下。現象として不正みたいなことはないと思います。今の医療を国の基幹産業にしようとしているのに、妨害する奴らがいる。百歩譲って、二十分を五分にしました。それで何になるの? 俺の給料、三千六百万だよ、たったの。ふざけんなよ。政経倶楽部に私費をぶっ込んでるわけだよ」
野田の選挙活動にDSの社員を手伝わせたのではないかと突っ込まれて、冒頭のコメントになる。
厚労省保険局医療課は「訪問医療の場合、患者のリスクは、外来の患者に比べて高く、手間隙もかかるため、診療点数を高くしている。あくまでもつきっきりできちんと診療をやっていただく。その結果として二十分あったのか、なかったのか、ということです」と文春に答えている。
野田首相は文春の取材に対して、期日までに返答をしてこなかった。消費税増税は国民の4割を超える支持を得ている。それは後世にツケを残してはいけない、日本を破綻させてはならないという将来に対する責任感に基づくものだろうと文春は書き、こう続ける。
「しかし、その増税が真の社会保障の充実に使われることなく、社会保障予算をむさぼる組織に流れ込むとしたら、消費税増税は国民の支持を得られるはずがない。しかも、その流れ込む先は野田首相の有力後援者なのである。野田首相、あなたに消費税増税を行う資格はない」
この結び見事である。
田中角栄と小佐野賢治は刎頸の交わりといわれた。だがともにスキャンダルで挫折した。それほどの大物ではないが野田首相と寒竹の友情も、このスキャンダルでひび割れそうである。