「そこまで調べてるんだ。もしそうだとしてもノーと言います。ウソをつきます。それはなぜかというと義理人情。従業員を張りつかせて選挙応援したって数十万。その件に関してはノーだと言うけど、あったとして、あげつらって、国難のときに意味がある? 野田は守るから、友情で。検察に言われても、俺はあいつを守る。検察にしょっぴかれようが、吐かないけど。一国の総理の後援会長だよ。そのくらいの根性じゃなければ」
これは「週刊文春」の巻頭「退職勧告スクープ 野田首相後援会長(医療グループ・オーナー)は社会保障費21億円を詐取していた」の中の、医療グループオーナー寒竹郁夫の言葉である。文春は野田首相に「消費増税を行う資格なし」とまで言い切っている。
船橋高校時代の同級生―「歯医者の出前」で年商86億円。うち21億円が不正か
文春の連続スクープが途切れない。今週は日本のリーダー野田佳彦首相と刎頸の交わりのある人間のスキャンダルを暴き、鋭く野田の責任を追及している。寒竹と野田は船橋高校時代の同級生で、千葉県議に当選した野田と再会して、以来20年にわたって寒竹は支援を続けてきた。
昨年(2011年)12月3日。野田首相は忙しい合間を縫って政経倶楽部というところで講演したが、この倶楽部の初代理事長で現在はファウンダーを務めるのが寒竹である。野田首相は総理に就任した2か月後に開かれた天皇、皇后主催の秋の園遊会にも、首相枠で寒竹を推薦し出席させている。
彼は訪問歯科診療をサポートする「デンタルサポート株式会社」(以下DS)の社長だ。訪問歯科診療とは、要は歯医者の出前である。歯科医、歯科衛生士、コーディネーターの3人でチームを組み、患者の自宅や介護施設を訪問して診療する。医療保険から診療報酬が医療法人に支払われ、DSは診療1件ごとに約4000円のサポート料を得る仕組みだそうである。
寒竹は街の歯科医だったが、訪問歯科診療に着目して売り上げを伸ばし、現在は年商約86億円になっている。だが、DSグループの元中枢幹部は「この売り上げには見逃すことのできない不正があるのです」と告発する。訪問診療では、診療時間が20分を超えると1軒家なら850点、老人ホームなどは380点が加算されるが、20分以内では初診でも218点、再診では42点しか加算されないのだ。20分を超えるか否かで最大8000円以上の差が出るという。DSグループでは20分以内で診療を終えても、20分を超えたことにして高い診療点数を請求する不正が横行しているというのだ。事実ならば刑事事件に発展する悪質行為である。取材していくと、寒竹は「ノルマ」を達成するよう、以下のような文書を出していた。
「各医院の勤務医の先生は、院長の管理のもとで点数算定方法を再確認し、平均点数が1100点となるようにして下さい」
DSグループの元中枢幹部は「組織として当たり前にやっていたということです。(中略)ただ、昨年くらいから幹部会議でも問題視され始めました。寒竹は株式上場を目指し、社内でもコンプライアンスを求める声が高まっていった」と語る。だが、これほどおいしいやり方をやめるわけにはいかなかった。3年前にDS内部で、不正請求をやめた場合にどれぐらい売り上げが減るかを試算したら、年間21億円という数字が出たからである。
この幹部はこのことが記事になったほうがいいと思いますと洩らし、続けてこう語る。
「記事になったら、もっと告発が出てくるはずです。やはり社会保障費をむさぼっている事実はあるわけで。規模を大きくしようとするあまり、その認識が抜けていたことは認めざるをえない」
野田首相は税と社会保障の一体改革を唱え、消費税増税に命を賭けると表明している。消費税増税は社会保障の充実に使われると説明しているが、DS社のような不正請求をする企業に吸い込まれていくとしたら、国民の理解は得られまい。