福島第1原発事故について、政府の原発事故調査・検証委員会はきのう23日(2012年7月)、800ページに及ぶ最終報告書を野田首相に提出した。委員長は失敗学の畑村洋太郎氏で、政府、東京電力、専門家の失敗・機能不全に厳しい言葉が並んだ。
政府事故調・畑村洋太郎委員長「安全神話しがみつき謙虚さ欠如が最大原因」
畑村は会見で、「安全神話に依存して推進してきた結果が今回の事故に見えます」「深刻な事故は起こらないという安全神話に根源がある」「津波への想定は貧弱で備えはほとんどなかった」「最悪の事態に至らないような備えをするという謙虚な態度が必要だ」と批判した。
あいまいな情報発信にも触れた。枝野官房長官(当時)が放射能の影響について、「ただちに人体への影響はない」と繰り返したことを、踏み込んだ説明がなかったと指摘。現地福島の災害対策本部の対応の遅さが招いた悲惨な事態として、原発から4.5キロの双葉病院の事例を取りあげた。行政、警察、自衛隊との連携不十分で患者の救出が遅れ、結果的に出さなくてもいい死者を出した。
双葉病院では事故翌日の3月12日(2011年)、比較的症状の軽い209人がバスで避難した。鈴木市郎院長が残って自衛隊などの救出を待ったが、救助再開は2日後の14日だった。しかも、連携ミスから別棟の患者が取り残された。3月末までに病院と関連施設で約50人が死んでいる。
畑村は「どこまで(被災した方の疑問に)答えられたかは自信がもてない。しかし、その方向を目指したのは確かです」と話す。とくに「放射線が強くて近づけないところ」について、国が主導して調査を続けるよう求めている。
依然わからない「地震の直接損傷」「水素発生の原因」
これでこの事故に関する4つの調査報告がそろった。民間、東電、国会、政府の4つを並べて、司会のみのもんたが「どれを一番にしますか」
三屋裕子(スポーツプロデューサー)「原発への地震の影響について、国会の事故調は影響があったといってます。それがわからないというのは不安ですよね」
それぞれの総括を整理すると、民間は「官邸の危機管理が場当たり的で泥縄」、東電は「想定外の津波が原因」、国会は「明らかに人災」、そして今度の政府は「さまざまな問題点の複合」となる。
みの「人災というのがわかりやすい」
杉尾秀哉(TBSテレビ報道局解説・専門記者室長)「言葉がはっきりしてる。国会は政治的立場が鮮明。これに対して、他はいろいろ配慮が感じられ、論点がはっきりしなくなる」
地震による機器の損傷でも見解は分かれた。民間は「考えがたい」、東電は 「ほとんどない」、国会は「損傷がなかったとはいえない」、政府は「認められない」だ。
みの「津波だって地震だろうよ、違う?」
杉尾「事故の最初のプロセスがどの報告書でもよくわからない」
みの「建屋は吹き飛んでる」
杉尾「でも、どうして水素が発生したかはわからない。燃料がどうなってるかも…。放射能が強過ぎて近寄れない」
潟永秀一郎(「サンデー毎日」編集長)「にもかかわらず再稼働は先行している。事故から学ぼうという姿勢がどうなっているのか」
けさの朝日新聞が「事故の責任を問われるべき人や組織や思想が、あたかも3・11などなかったかのように物事を動かしている」と書いていた。まさにその通りだ。