「海の日」のきのう16日(2012年7月)、全国各地で猛暑日を記録したが、福島県いわき市の勿来海水浴場で2年ぶりの海開きがあった。県内の海開きはここだけだ。大震災の昨年(2011年)は震災と原発事故の影響で県内17か所の海水浴場すべてが休止だっただけに、地元では喜びの表情だが、以前のように客足が戻って来るか、不安も隠せない。
震災前はひと夏に18万人の人気海岸
福島県内で勿来海水浴場だけがオープンできたのは理由があるという。リポーターの井口成人が現場から報告する。「この海水浴場も震災で大津波に襲われました。しかし、高さ10メートルの道路の壁で止まり、引き潮のときにガレキが運ばれることがありませんでした。震災前の砂浜の状態を保つことができたのです」
同じいわき市内でも約20キロ離れた合磯海水浴場はまだ土のうが置かれたままの状態で、堤防も流され、砂浜も地盤沈下した。勿来以外の海水浴場が海開きできないのは、(1)ガレキ処理が終わっていない(2)津波で海岸線が変形・地盤沈下で砂浜減少(3)緊急時の安全対策ができていない(4)風評被害への不安―という4つの壁があるからだ。
こうした中での海開きなので、地元の勿来海水浴場にかける期待は大きい。震災前はシーズン中に18万人が訪れていた。市の観光物産課の担当者は「感無量です。支援をいただいたみなさんに感謝を伝えていく第一歩にしたい」と語る。
安全性に問題ないが心配根強い「原発の放射能」
しかし、不安はある。4つの壁の4番目の放射能に関する風評被害だ。いわき市は海水と砂浜の放射性物質の調査を行い、安全性に問題ないと確認している。それでも海開きに子どもを連れて訪れた母親は、「あんまり長時間はいられない」。別の女性も「地元なんですけど、親としてはちょっと心配」という。民宿の経営者も「客の反応ははたしてどうかな」といい、予約の状況はと聞くと、答えにくそうに「まだ、ないですね」
司会の羽鳥慎一「しっかり測定して安全性をアピールしていく以外ないですね」
いわき市では「ことし海開きした実績が、来年からの海水浴場復興の道となってほしい」と話している。そのことを願うほかない。