インサイダー取引、AIJ、オリンパス...金融犯罪の裏でうごめく「ある証券マン」

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   野村、大和、FMBC日興の3大証券がいまインサイダー取引で揺れている。これまでも年金基金の運用で1000億円以上の損失を出した AIJ投資顧問事件、長年にわたって巨額の損失隠しを続けたオリンパス事件と、日本の証券市場そのものが問われている。

   インサイダー取引は、証券会社の営業マンが有利な証券情報を大口の投資家に流し、特定の顧客に利益をもたらす違法行為だ。本来公正であるべき市場の信頼を損なう重大犯罪である。しかし、日本では長いこと違法ではなく、一種の顧客サービスですらあった。規制がかかったいまも悪しき慣行として続いて いたのである。

   オリンパスはいわゆる「飛ばし」で損失隠しをしていた。これは帳簿の操作をした上で、損失を海外の子会社などに移す手口だ。指南したのは証券マンたちで、これもまた日本では違法ではなく、似たような慣行として広く行なわれていた。

   「クローズアップ現代」がAIJ投資顧問の浅川和彦社長のケースなどを取材したところ、オリンパスも含めて、登場人物が同じルーツをもつことがわかっ てきた。バブルの崩壊で巨額の損失を抱えた企業の多くが、これら一握りの証券マンの手で決算の粉飾を繰り返していたのだ。

「法網すれすれの金融商品」で損失隠しや飛ばし

   オリンパス事件で逮捕された(金融商品取引法違反)Aは、アメリカ系証券会社の東京支店長だった。1980年代の規制緩和で日本に進出した会社だ。元部下の証言では、Aは法の網の目すれすれの金融商品を作るのが巧みで、企業の損失隠しにも腕を振るった。オリンパスとのつきあいは 20年にもなるという。

   Aの下にいた元副支店長は「当時は飛ばしを禁ずる法律はなく、法律違反など考えもしなかった」という。この会社は実績を伸ばし、 89年に6億円だった売り上げは93年に50億円になった。「毎月黒字で、まだバブルの中にいる感じだった」という。

   しかし、「飛ばし」はアメリカでは違法だ。本社はこれに気づき、96年に日本での株式部門を閉鎖。約30人が辞めた。その中に、のちにAIJを立ち上げる浅川もいた。元副支店長はコンサルティング会社を作って、見せかけの動きで株価を不正につり上げるなどして、一時は「企業再生請負人」として名をはせた。

   この証券マンたちの道は別々になったが、土俵は同じ証券市場だ。顧客を扱う手法はみな似たようなものだった。AIJの浅川社長が国会で「だますつもりはなかった。リーマン・ショックさえなければ...」と語っていたのは、案外本音なのかも知れない。

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