「ボタンを押せば救急車が来る。だからここで余生をゆっくり過ごそうと思って…」
「週刊新潮」のワイド特集「我が人生『運命の一日』」に、久しぶりに天地真里の消息が載っていた。白雪姫も60歳になった。横浜市内の家賃7万円のシニアマンションで一人暮らし。天地がこう語る。
「気分が悪くなったら、ボタンを押せば救急車が来るんですよ。だからここでね、余生をゆっくり過ごそうと思って…。1日500円でお弁当もつくのよ。お肉とか、お魚とか。夕方の4時半になると、フロントへ取りに行くの」
「ひとりじゃないの」「水色の恋」「ちいさな恋」で一世を風靡し、紅白歌合戦にも出場した。34歳の時に実業家の男性と結婚して長女が生まれたが離婚し、長女が天地の近くに住んでファンクラブの管理を行い、家賃や生活費はファンクラブの会費で賄っているという。彼女の近影が全盛期の頃の写真の下に小さくあるが、過酷だった人生が刻まれた顔である。
日本中のアイドルになった彼女に、元トルコ(今のソープランド)嬢ではなかったかというスキャンダルが出たことがある。真偽のほどはわからないが、彼女には他のアイドルにはない親しみやすさがあった。なぜか彼女の歌はゲイたちに好まれ、新宿二丁目のクラブ「白い部屋」やゲイバーで「彼女」たちが手をつないで「ひとりじゃないって、素敵なことよ~」と絶唱していたことを思い出す。
新宿でお袋さんとおにぎり屋を開いたこともあったな。デビュー5年後に体調を崩し、徐々に芸能界からフェードアウトしてしまった。足立区に住んでいたときはアパートの壁が薄かったため、河川敷で歌っていたという。彼女は今でもレッスンを欠かさない。アカペラで1時間半かけて誰もいない自分の部屋で歌うそうだ。記者にも「水色の恋」を披露してくれたそうだが、前歯が一部欠けているので時折息が抜けてしまうが、よく通る声は昔と変わらなかったという。
70年代を語る上で欠かせないアイドルも還暦かと思うと、自分も長いこと人生を歩んできたなと思わざるをえない。どこかで彼女の手記を出さないかね。団塊世代は買うと思うよ。