室伏広治ロンドン五輪で乾坤一擲―すべてのピークを8月5日午後8時20分に合わせろ!

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   ロンドン五輪も近づく梅雨の夜、「クローズアップ現代」も「頑張れニッポン」に手を染めた。取り上げたのは男子ハンマー投げの室伏広治選手だ。2004年のアテネ五輪の金メダリストもはや37歳。今回も金メダルを狙うが、年齢とも闘わなければならない。アスリートにとって年齢は冷酷だ。筋力は衰え、怪我はしやすくなり、回復は遅くなる。

   33歳で挑んだ北京五輪では5位に終わり、年齢問題と直面することとなった。それまでの背筋の力に頼った投げ方が限界に来ていたのだ。そこで体全体をうまく使うバランスの良い安定したフォームに変えた。意識したのは「赤ちゃん」が寝返りを打つときの自然な動き方だという。

   昨年2011年の世界選手権では、新フォームで大会史上最年長の優勝を果たした。「今より力を付けることは無理。いまの自分の力でどう最高のパフォーマンスを出すかを考えてやっている」と室伏は言う。

「コンディショニングのピーク、テクニックのピーク、体力のピーク」

   室伏がいま傾注しているのが「ピーク作り」。オリンピックに照準を合わせて綿密に計画を立て、去年から準備をはじめた。若いときはシーズン序盤にピークに達すると、夏の大会までピーク状態を保てたという。だが、いまはそれは無理だ。ピークを3回に分け、2歩進んで1歩下がる式のやり方で、一番高い山を五輪本番に持って行こうとしている。少しでも調整にズレが生じれば、ピークは五輪と重ならない。「コンディショニングのピーク、テクニックのピーク、体力のピークを一致させないといけない。どれをミスしても結果はでない」(室伏)

   とくに恐いのは怪我だ。怪我をすれば計画は大幅に狂ってしまう。そこで怪我防止のためのウォーミングアップを丹念に行い、若いときの3倍の1時間をかけて30種類をこなす。カッピングやマイナス180度の液体窒素を発生させる装置に当たるといった疲労回復法も取り入れている。

   オリンピック前の最後の大会となった6月の日本選手権では、あるチェックをしたという。五輪のハンマー投げ決勝は8月5日の午後8時20分で、日本選手権も夜だった。ウォーミングアップや準備練習、食事といった1日のスケジュールをどう組めば、競技の時間にピークが持ってこられるかを計算したのだ。結果として大会は前人未踏の18連覇。貴重なピーク設定の試算もできた。

   「本当に金メダル(楽しみですね)」。それまでいまひとつ関心薄な感じで進行していた国谷裕子キャスターが、金メダルという言葉に力を込めて、締めくくった。

ボンド柳生

NHKクローズアップ現代(2012年7月10日放送「年齢の壁を越えろ~室伏広治 金メダルへの秘策~」

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