ロンドン五輪マラソンで、日本選手の中でもっとも期待されているのが藤原新だ。キャスターの国谷裕子は「1992年のバルセロナオリンピック以来、日本のマラソン界は低迷をしていました。世界のマラソン界は、ケニアやエチオピアなどアフリカ勢の台頭により高速化しています。藤原選手がどこまでアフリカ勢と勝負できるのかが注目されています」と話す。
走り込みよりスピード重視の練習法
現在、世界のトップ記録は2時間4分台。42.195キロをこの時間で走ると、時速に換算して20キロ以上。マラソンはかつては持久力の闘いだったが、いまやスピードレースである。藤原のベストタイムは2時間7分で、世界トップクラスとの差は3分である。藤原はなぜ早い走りができるのか。国谷は「藤原選手はこれまでの走り込み重視の練習とは対照的なスピード重視の練習を重ねています」と説明する。
伴走する自転車の背中の携帯端末に写る自分の姿を見ながら、ランニングフォームの修正したり、プロのインストラクターなどから高速走法のフォームをチェックしてもらう。ゲストのマラソン解説者・金哲彦はこう話す。
「北京オリンピックでケニア勢は1キロを3分台で走っています。このスピードとどう渡り合うか。スタミナや体力だけの問題ではありません」
シティーの狭い直角カーブが勝負どころ
国谷「ロンドンオリンピックでは、どこが勝負どころになりますか」
金「これまではテムズ川の直線コースが勝負どころと見られていましたが、シティーと呼ばれるエリアの狭い道での直角カーブで勝負が決まるでしょう。3回周回するマラソンコースはオリンピックでも初。この直角コースでは先頭集団は一丸となり走り抜けますが、選手同士が接触し転倒という事態も考えられます。この難所をどう走り抜けるかです」
国谷「藤原選手の高速マラソンは今後、日本マラソン界にどのような影響をもたらしますか」
金「これまで日本のマラソンはとにかく走り込み重視でした。でも藤原選手の登場で、こうした練習方法もある、こんな走り方もあると日本のマラソン界を変える可能性があります」
藤原が新しい練習法や目標を実現できたのは、実業団、陸連という縛りから離れたからだ。日本がマラソン低迷から脱する鍵はそこにあるのではないか。
ナオジン
*NHKクローズアップ現代(2012年7月9日放送「常識を超えろ~男子マラソンロンドン五輪への挑戦~」)