尻馬に乗って、あわよくば油揚をさらおうという虫のいい野田首相の姑息な策が飛び出した。石原都知事が購入を進めた北尖閣諸島に、音なしの構えだった野田が一転、政府が買うと言いだしたのだ。
訪問先の福島で7日(2012年7月)、「所有者の方とも連絡を取りながら、総合的に検討していくというところであります」と国が購入して国有化することを明らかにした。これに先立って、6日、長浜博行官房副長官と長島昭久首相補佐官を都庁に派遣して石原に政府の意向を伝えたという。
地権者「「選挙を前にしての一部政治家のパフォーマンス」
野田の唐突な国有化方針の裏にどんな思惑があるのか。笠井信輔アナは「石原都知事に購入されるのが嫌なんだと思いますよ」という。たしかに、石原は苦々しげにこう言い放った。「急に『自分たちが買いたい』という。まず東京が買い取って、いつでも国に渡しますよ。乱暴というか、稚拙というか、粗雑なんだよな、やることが。とにかく君らは黙っていなさい、東京がやるから」
尖閣諸島の地権者の親族からマスコミに宛てたこんな文章もFAXで届いた。「選挙を前にしての一部政治家のパフォーマンスではないかという印象を抱いております。…地権者の兄と石原都知事の話し合いを静かに見守っていただきますようお願い申し上げます」
中国のホンネ「指導部交代を前にギクシャクしたくない」
時事通信の田崎史郎解説委員「消費増税法案の衆院通過でメドが経ったし、9月には日中正常化40周年を迎え、この時しかなかったのだろう」
実際、中国国営新華社は「誰であろうと中国の神聖な領土を売買することを許さない」と中国外務省の談話を配信したものの、抗議はそれまでいたって控えめだ。日中関係に詳しい拓殖大の石平客員教授は、「尖閣問題でことを構えたくないのが中国の本音だと思う。秋の共産党大会で最高指導部が変わり、取り敢えずは『国の安定』が第一と思っている」
野田の方も解散・総選挙もありうる情勢の中で、ここらでイメージのいい存在感を示したいところだろう。国有化のタイミングは今がいいというわけだが、コメンテーターの眞鍋かをり(女優)はこんな心配をする。
「もともと弱腰外交と言われるものがあったから、知事がはっきりした姿勢を示した。逆に国が買い取るとなるとその後が…」
都所有地になると、石原が尖閣諸島になんらかの施設のようなものを作り、そうなれば中国との関係はギクシャクする。それを避けたいというのが野田の思惑だろう。逆に、石原は国有化しても、これまでと同様に曖昧なまま、ただ放っておくだけだろうと懸念しているのだ。