愛人を父親の養女にして実家相続
09年9月に満里子が夫の部屋を片付けているとき、12冊の黒い手帳を見つけた。そこには講演料、勉強会謝礼など給与外所得と思われる記述があった。それによると、92年から94年の3年間だけで1000万円近くの『脱税』をしていた疑いが濃厚だという。
藤井裕久、安倍晋三、松本龍などの政治家からの金額も書いてあり、朝日が取材してみると、松本議員は事務所を通して「大武氏へ10万円を現金で払ったのは事実です。(中略)勉強会のお車代だと思います」とコメントした。ほかにも、主税局の有力な天下り先である税理士団体から「副収入」を得たかのような記述も並んでいた。この金を夫はA女という51歳の彼女に使っていたのだ。妻がこう語る。
「手帳を解読した結果、A女と夫との交際は86年以降、1700回以上も記され、A女に対し、11年間で計3800万円以上の飲食費、宿泊代などの出費があったと記されていました。(中略)夫の使途不明金の多くが彼女へ流れていたのです」
夫は家を出てからA女と暮らしているのかと妻は思っていたが、父親が住んでいた実家で別の女性と暮らしていることがわかったという。それも07年4月には彼女を父親の養女にして、1年半後に父親が死ぬと実家を相続させていたのだ。妻はこれを「脱法的な重婚」だと難じている。離婚が成立していないために考え出したやり方なのだろう。自宅を訪ねた記者にその女性は「妻です」といい切ったそうだ。
直撃した朝日に対して、大武は弁護士と現役国税職員を引き連れて取材に応じた。講演料などの雑所得と確定申告された額が数百万円も違うが、脱税ではないのかと問う記者にこう答える。
「僕は現役中はビタ一文、謝礼はもらっていない。でも、講演料がいくらか主催者に聞き、将来、講演で自活するための参考資料として手帳に書いた。すべて僕の妄想だ」
車代だとお金を渡したことを認めた国会議員がいたがと聞くと、同席した国税職員が身を硬くしたそうだ。泣く子も黙る国税庁長官の実態が分かって、すこぶるおもしろい記事である。
小沢一郎の妻・和子の「離縁状」といい、今回のケースといい、げに恐ろしきは妻である。小沢も言ってはならないひと言「お前とはいつでも別れられるが、あいつ(永年付き合ってきた愛人=筆者注)とは別れられない」といったばかりに、人間としてだけではなく政治家としても「失格」であることを暴露されてしまったのである。