東京電力の新しいトップ、下河辺和彦会長と広瀬直己社長がきのう3日(2012年7月)朝、福島県二本松市にある浪江町の仮役場に馬場有町長を訪ね、就任のあいさつと原発事故の謝罪をした。ところが、これがとんでもない展開になった。
町長は「謝罪に来るのに、なぜ浪江町が最後なのですか。いつもそうですよ。何でなんですか。立地町でないからですか。甚だ残念です」とのっけから険悪な空気に包まれた。下河辺会長が「決して十分とはいいがたい対応になってしまい、あらためてお詫びしたい」と語ったが、馬場町長は「憤りを感じました。不十分な対応じゃない。全然対応してない」と怒りは収まらない。
「原発事故2日後に社員2人が説明に来た?私は会ってない」
町長が問題にしているのは、東電と町との間の通報連絡協定のことだ。原発でトラブルがあれば連絡があるはず。これがなかった。だが、先に東電が公表した最終報告書の中で、「事故直後、浪江町へは2日後に社員を派遣し状況を説明した」とあった。これに馬場町長は「東電のだれが、どんな内容を町のだれに説明したのか」と「協定不履行に関する質問書」を提出。回答期限をきのうとしていたが、広瀬社長は「申しわけありません。きょうはお持ちしていません」と平気な顔で言った。
これで町長の怒りが爆発した。「どうして持った来ないんですか。公文書で差し上げているんですよ。賠償でもそうだ。事故収束でもそうだ。何なんだ、いったい。誠意を示せよ」
社長は「まだ追跡調査が残っているので」といい訳をしたが、町長は「社長が持ってきてもらえますか。面と向かい合わないと信じられない。信頼関係がないから」。これに「一両日中に、私が…」と約して話は終わった。馬場町長は「話にならない。人をバカにしてる」。「一両日中に」といっていた回答書を持って、その日の夕刻に広瀬社長が再訪した。回答書の内容説明は非公開で行なわれたが、約50分の説明を聞いた町長は「でたらめですよ、でたらめ。全部ウソ。回答になってない。ゼロ」
東電の誰かがウソをついている
こういうことだ。東電は「原発事故の2日後、社員2人が町長、副町長らに広報文を示し、福島第一原発の状況などを説明した」というのだが、町長は「私は状況説明を受けていない。もし受けていれば、3、4時間おきに開いていた災害対策本部で議論している。 私は本人ですよ。そんな説明一切なかった。こんな回答では納得できない。しかるべきところに出ていくしかない。とんでもないことだ」と刑事告発(業務上過失傷害)も辞さないという。
司会のみのもんたがカメラに向かって、「どう思いますか。本人が聞いてねぇよといってる」と弁護士の若狭勝に聞く。「社長に話が上がるまでに、だれかが東電を守らないといけないと、事実が曲げられた可能性がある。町長がウソをついてると言っているのも同然だから、名誉毀損とか侮辱罪でもできると思う」
逢坂ユリ(資産運用コンサルタント)「呆れますね。普通の企業ではありえない」
片山善博(慶応大教授)「社員が2人というなら、だれとだれが行ったのか、それが出てくればどっちが正しいかわかる」
みの「東電もふんどし締め直したほうがいい。心ある社員いるんでしょ。こういうことがニュースにならないようにしないとまずいんじゃない」
このニュース、新聞によっては夕刊にも朝刊にも載っていなかった。ただの田舎の騒ぎだとでも思ったのか。