北朝鮮の金正恩第1書記の実母・ 故高英姫(コ・ヨンヒ)さんの映像を集めた記録映画が作られていることがわかった。故金正日総書記の3番目の妻だが、在日朝鮮人であるためかこれまで一切表に出なかった。
記録映画「偉大なる先軍朝鮮のお母様」を党・軍幹部に試写
映画は「偉大なる先軍朝鮮のお母様」という85分49秒のもので、正日と一緒にいる映像が多い。馬を走らせる姿、軍施設や工場の視察、50歳の誕生日にスピーチをする肉声もあった。また、幼い頃の正恩といる写真もある。
高は大阪生まれで、1960年代に一家で帰国。その後、芸術団で踊り子をしてるのを金正日が見初め3番目の妻になった。次男の正哲、三男の正恩を生んだが、出自から金日成主席は最後まで認めなかったという。2004年に病没している。
映像は北朝鮮救援団体「RENK」が入手した。代表の李英和・関西大教授は、金正恩の実母として神格化、偶像化することがねらいで、6月26日が生誕60年にあたり、テレビで放映される可能性があった。5月に軍や党の幹部に試写していたという。
映像で登場するときの名前は「李恩実」。ナレーションは一貫して「敬愛するお母様」「尊敬するお母様」とばかりで、実名はおろか生まれ育ちも一切明らかにされていない。高が在日だったことは北朝鮮では禁句になっている。在日の階級は「敵対的」と分類され低いからだ。
金正日料理人「間違いなく彼女です」
映像を見て、正日の専属料理人だった藤本健二氏が「コ・ヨンヒ夫人です」と確認した。藤本氏は金正日にもらったという半袖のサファリ風上下だった。「こういう動画があることに驚いてます」という。「素晴らしい女性ですが、北ではこれまで一切映像が出てこなかった。隠していた。なぞです」
ピストルを持った写真があった。藤本氏は「将軍も夫人もピストルは上手かった」という。引き金を軽くした特製拳銃で腕を競っていたとか。また、馬に乗る姿、ドーナツを作る姿などどれもホンモノだと確認した。
高が幼い正恩と一緒の写真が3枚あった。藤本氏は1990年に初めて息子たちに会った。正日が「今日は息子たちを紹介しよう」といい、正恩は7歳だった。それまで側近も息子がいることを知らなかったそうだ。
司会のみのもんた「なんで秘密に? 可愛がってはいたんですか」藤本「はい」
みの「母親としては?」
藤本「やさしい母親でしたね」
この映像は結局、北朝鮮国内では放送はされなかったのか。「在日」という爆弾を抱えている限り、出すにはリスクがある。なんにしてもわかりにくい国だ。