米国のベンチャー企業が開発した宇宙船が国際ステーションとのドッキングに成功、食料や実験器具などの物資を届けて無事に帰ってきた。請け負ったのは創業10年たらずの民間宇宙開発会社「スペースX」で、背景には民間の参入を促すことで宇宙開発の技術革新を一気に推し進めようというアメリカの戦略がある。
旗を振るオバマ大統領も「アメリカこそが宇宙の新しい時代をリードしていくのだ」と言って憚らない。
ロケット・宇宙船開発、ドッキング技術すべて自前
高さ7.2メートル、太陽光パネルの端から端までの長さ16.5メートルという初の民間宇宙船ドラゴンが5月22日(2012年)、地球から400キロ離れた宇宙空間を秒速8キロという弾丸よりも早いスピードで動く国際宇宙ステーションにドッキングした。「どう思われますか」とキャスターの森本健成がJAXA (宇宙航空研究開発機構)の長谷川義幸理事に聞く。長谷川理事は今年1月に「スペースX」社を視察している。
「びっくりしました。民間企業があの難しいランデブーの技術を短時間で獲得してやり遂げた。すごいなと…」
スペースX社を創立したのはまだ40歳というイーロン・マスクだ。20代で起こしたIT企業の成功で巨額の富を得た彼は、電気自動車や再生可能エネルギーなど最先端のビジネスを次々と立ち上げた。そして、世界に変革をもたらしたい対象として、いま最も力を入れているのが宇宙開発だという。マスクは「人類の未来にもっと濃影響を与えるものは何か。ITなどさまざまな分野に挑戦してきたが、宇宙こそ最後のフロンティアだと確信したんです」と話す。スペースX社には航空やIT分野などさまざまな業界から集まった社員は現在1800人で、平均年齢は31歳という。
この会社の最大の特色は、従来のような高価な専用部品を一から開発・製造するのではなく、既存の技術を利用する方法を採用していることである。たとえば、エンジンは自動車やコンピューターの部品を活用し、しかも従来は1段目と2段目にそれぞれ大きさや推進力の違うエンジンを搭載していたが、1種類にして必要な推力に応じて数を増やす方法を採用している。
また、国家プロジェクトではロケットと宇宙船の製造を別々の会社が受け持っていたが、「スペースX」は1社で一貫生産体制を敷いたことが成功に結び付いたという。
もっとも、当初は失敗の連続だった。06年の初の打ち上げ実験では、発射直後の燃料漏れから制御不能で墜落。それから5年、7回の実験の末ようやくロケット打ち上げ技術が確立した。NASAはスペースX社と今後3年間、総額16億ドルで国際宇宙ステーションに必要な物資を送る契約を結んでいる。