消費増税法案が衆議院を通過し、野田首相の描く筋書きに1歩コマを進めた。ところが、フタを開けたら足元から73人もの造反議員が出て、民主党は事実上の分裂状態。内閣不信任案の可決が現実味を帯びてきた。
野田首相は処分ためらい「自分から党分裂できない」
消費増税法案の賛成票363票、反対票96票、欠席・棄権19票だった。このうち民主党議員の反対票は57人、欠席・棄権票は16人で、合計73人が造反したことになる。野田は、「心から」を3度も絶叫し、懇望したかいもなく、予想外の多さに「残念ながら造反者が出ました。厳正に対処したい」と強気の発言をして見せた。
しかし、反対者すべてを除名処分すれば与党の過半数割れになり、少数与党に転落してしまう。時事通信の田崎史郎解説委員は「この発言を聞いていてかなり演技が巧いなと思いましたね。『厳正に』を強い語調で発言したが、中身や時期は言っていない。言葉でごまかしているが、実際の処分は早くて8月、場合によっては国会が終わった後か、9月の代表選の後になると思う」と解説する。
反対票を投じた小沢元代表は、衆院本会議場を出るとき、わが意を得たというわけか「よしゃ」とつぶやいたのに、その後の会見では離党や新党には触れずじまい。キャスターの小倉智昭は「まだ模索しているということですかね」と訝った。これに田崎は「多分、あさって29日の金曜日にも離党届・新党結成の可能性が強いという感触ですね。地元に戻って支持者に離党説明をしないといけないので開けたのでしょう」と推測する。
「内閣不信任」小沢グループ賛同しても否決濃厚
今後の野田政権の行方だが、田崎は「増税法案を確実にしなければいけないが、それが8月にずれ込む可能性がある。その後、自民・公明両党が攻勢に出て選挙に持ち込もうとする。内閣不信任案を提出し、小沢さんたちが同調するかもしれないが、今の40人前半では10人ちょっと足りない」と分析している。
笠井信輔アナ 「では、成立した消費増税法案はもはや変えられないのかな」
田崎「総選挙の結果次第ですね。可能性は低いが、小沢新党が大量に議席を取れば、大きく見直された郵政民営化と同じようなことになる可能性がある」
ここでデープスペクター(テレビプロヂューサー)が吠えた。「何がだらしないかというと、一律増税ですよ。外国ですと非課税商品がとても多い。日本の消費税を高いといわれる外国を比べると、日本は実態としてすでに20%を超えている。怠けているのはそこなんです。民主党のいう現金支給じゃなくて、必要なものは非課税にする。課税の仕方がシンプル過ぎてだらしない」
確かに指摘の通りだ。税率を2ケタ台に乗せるのに一律はおかしいし、民主党の弱者には現金支給という相変わらずのばらまき案はもっとおかしい。また、受け取った消費税を業者やメーカーがいったん懐に入れて、利益に応じて治めるというのも変だ。消費者が払った消費税はそっくりそのまま税務署に渡すのが「正しい消費税」じゃないのか。