野田内閣は関西電力大飯原発3・4号機の運転再開を決定した。キャスターの国谷裕子は「脱原発を標榜していた民主党政権が、ここに来て原発は重要な電源と明言し、野田総理大臣は原発の運転再開に理解を求めています。電力不足への懸念の一方で安全への不安は強く、国論を二分する中での判断となりました」と伝えた。
「国民の信頼回復に向けさらなる取り組み」
スタジオには細野豪志・原発事故担当大臣がゲストとして登場。世界でも例を見ない「原発事故を経験した日本が、原発とどう向き合っていけばいいのか」と国谷は問いかけた。細野は「西川福井県知事は原発再稼働にあたって、使用済み核燃料の中間貯蔵対策を国が責任を持って進めることや、地震と津波の予測を太平洋側だけでなく、日本海側でも積極的に行うことなど8つの前提条件を提示されました」と話し始めた。
さらに、「私や枝野経済産業大臣ら担当閣僚は、この条件を真摯に対応する考えを申し上げました。原子力行政や安全規制に対する国民の信頼回復に向け、さらなる取り組みを始めていく決意です。政府として、原子力に関する安全性を確保し、より高めていく努力をどこまでも追求していく。使用済み核燃料の最終処分場建設は国の責任でやらねばならないと考えています」という。まあ、予想された通りの話だ。
知りたいのは「脱原発依存」放棄したのか
国谷「西川知事は大飯原発の再稼働について、『国から安全確保に努力するという約束をいただいた。主な電力消費地である関西の国民の生活と産業の安定を守るために、再稼働に同意する決意を伝えた』と話していますが、今後の安全確保はどのようにお考えですか」
細野「まずは大飯原発の再稼働に向けた工程の安全性のチェックです。くれぐれも見落としがないように細かな注意が必要です」
いったいこの日の「クローズアップ現代」は何を伝えたかったのか。「政治決断を問う」などと言いながら、野田内閣の言い分を垂れ流しただけである。国民が本当に問いたいのは、そのプロセスは「ただちにゼロ」から「寿命が来たものから停止・新設ゼロ」までさまざまにあるが、多くが納得している「脱原発依存」という方向はどうなってしまうのかという点だろう。社会問題などでは鋭い切り込みを見せる「クローズアップ現代」だが、政治がらみのこうしたテーマになると、たちまち「国営放送」の馬脚を現してしまう。
ナオジン
*NHKクローズアップ現代(2012年6月18日放送「原発運転再開『政治決断』を問う」