「国民生活を守るため再稼働すべきだというのが私の判断だ」
関西電力大飯原発3、4号機の再稼働について、野田首相は先週8日(2012年6月)、わざわざ記者会見を開いてこう語った。しかし、守ろうとしているのは電力会社の経営なんじゃないのか。
夏場限定提案も「生活守れない」と一蹴
野田の再稼働表明を受けて10日におこなわれた福井県の原子力安全専門委員会では、一部の傍聴者が希望者全員の傍聴を求めて混乱し、会場を移して審議が行われた。野田、西川福井県知事、立地自治体のおおい町とは以心伝心というわけか、委員会は形だけで「安全性は妥当である」との結論を出した。
また、大阪府や京都府、滋賀県が提案していた夏季限定の再稼働についても、野田は「夏場限定では国民の生活は守れません」と一蹴した。橋下大阪市長は「夏季に限定した大飯原発の再稼働でも、十分に関西の府県民の生活は守ることができる。野田首相が守ろうとしていることが本当に関西府県民の生活なのか、電力会社の経営、利益なのかそこらがちょっと分からない」と、とりあえず再稼働容認に転じたことは横に置いて批判した。
福島原発周辺住民64%帰還困難。10年後も2割がダメ
野田の言う「国民の生活を守るため」という空疎なセリフは、勘ぐれば、立地自治体のおおい町住民の生活を守るためとも、停止中の他の原発の再稼働を視野に入れた発言とも取れる。
キャスターの小倉智昭は「野田さんは『国民のため』と強調されたが、『国民の安全のために』ということも一方では重要なことですがね…」と強い不満を。たしかに、「国民生活守るのため」と「国民の安全のため」では意味は違ってくる。
番組の示したデータによると、福島原発周辺11市町村の64%の住民が帰還困難な状態にあり、10年後も約20%が帰還できないという。NHK は10日のETV特集で、福島市内を流れる阿武隈川の河岸が高濃度の放射性物質に汚染され、立ち入れない状態が放置されたままだと取り上げていた。応急手当のような安全対策で再稼働に踏み切れば、そうした怖さが琵琶湖周辺、さらには京都や大阪市内でも起きない保障はない。
コメンテーターの夏野剛(NTTドコモ元執行役員)は「曲がりなりにも選挙で選ばれたリーダーが、こう決めたんだから従うしかないんですかね」という。地震、津波がないことを神仏に祈るしかないというわけか…。