福井県大飯原発の再稼働に反対してきた橋下徹大阪市長が、これまでの姿勢を一転させ「再稼働容認」を表明した。裏に何があったのか。前門の虎、後門の狼が見えてきた。
会合中に「再稼働についてもう決める時期」と通告
安全性を置き去りにしたまま、政府がはっきり再稼働の意思を表明したのは30日(2012年5月)に開かれた関西広域連合会の会議中だった。証言するのは大阪府市統合本部の特別顧問をしている古賀茂明と松井一郎大阪府知事だ。
古賀「表に出ていないが、会議に途中で政府側から『再稼働についてもう決める時期』という発言がはっきりした形であった」
松井「それはもう、すごい権力というものを皆が感じたのではないですか」
この前門の政府圧力に対し、古賀が語る後門は…。
「関西電力が『この夏は大変ですよ』と各企業を回っているなかで、『計画停電もありますよ』と圧力をかけた。計画停電と聞けば企業としては何とか動かして欲しいとなる。首長さんによっては経済界のサポートで選挙を戦っている人もいて、首長らにかなり圧力がかかった」
もはや打つ手がなくなった橋下市長は、「タテマエ、上辺ばかり言っていてもしょうがない。これが政治の現実ですよ」と白旗をあげた。
大阪の主婦「何のために節電するのか分からなくなった」
収まらないのは置いてきぼりをくった市民だ。「おかしいですよ。橋下さんは最初は反対って言っておいて、ここへきて誰の顔色見て…。期間を決めてとか、そんなイヤらしい言い方は絶対ダメですよ」(京都の主婦)、「何のために節電するのか分からなくなった」(大阪の主婦)とブーイングの嵐である。
コメンテーター陣も、吉永みち子(作家)は厳しい表情でこう言う。「橋下さんに対して、では今までもタテマエだったのかというガッカリ感がありますよね。この夏、再稼働なしで乗り切ればやはり原発いらないだろうとなっちゃう。それを防ぐために、とにかく再稼働があったから夏をしのげたんだというものが欲しかったのだと思う」
政府としては、大飯原発の再稼働さえ突破すれば、あとの原発再稼働はやり易くなると思っていることは確かだろう。