サンデル教授の公開授業「3・11は日本の民主主義の新たな始まり」
話は少し変わるが、5月28日(月曜日)、国際フォーラムで開かれたハーバード大学マイケル・サンデル教授の公開授業に行ってきた。早川書房と国際フォーラムの記念事業とあって、一番広い5000人収容のA会場がほぼ満員だった。
サンデルは政治哲学者である。テレビでおなじみのやり方で、サンデルが問題提起し、賛成か反対かをパンフレットの裏表で表明させ、反対、賛成の人間を指名し議論させていく。彼のやり方のいいところは、指名した人間同士に議論させるが、自分では結論を出さず、あくまでも発言者に考えさせるところである。
まず、市の命名権の問題から入り、自分の名前を企業が買いたいといってきたらあなたは売るかと発展させ、レディ・ガガのチケットをダフ屋が売るのは賛成か否かを問い、では中国の病院で患者が多いために整理券を出しているところがあるが、これをダフ屋が患者に売りつける行為は是か非かと展開させていく。
おもしろかったのは、アメリカの一部の学校では、成績が上がったら5ドル、本を読んだら2ドルあげるというところがあるが、どう思うかというのがあった。サンデルがいうには、成績を上げるためのインセンティブは失敗したが、本を読むほうは成功した例が多いそうだ。だが、子どもたちは本を読むようにはなったが、短編ばかりで長編を読むようにはなっていないというのが笑える。
スイスでは核廃棄物を処理するための施設をある村に申し出たところ、村民投票で51%が賛成したという。そこで国は、村民一人当たりかなりの額の補償金を出すと申し出たところ、もう一度村民投票をしたら賛成が25%に減ってしまったが、なぜかと問いかける。サンデルによると、最初は社会的使命を果たすという心づもりが村民にあったが、カネでそれが汚されるという気持ちになったために減ってしまったと、解説していた。
サンデルは、日本の民主主義はまだこれからだが、3・11の東日本大震災以降、日本人全体が「主張する」「発言する」「議論する」ようになってきた。これが日本の民主主義の新たな始まりになると思うという言葉で締めた。なかなか刺激的な夜であった。