「余計な感傷は何の役にも立たない」自分に言い聞かせる看護師
これに対して、病院スタッフがキレ気味に、そんな甘い考えは通用しないと悟らせにかかった。「なんでも元気にリフレッシュして全部、というのは見きれませんよ。いまの国の制度では」。看護師もたたみかけた。「日本がこれだけの超高齢化で、医療費もどんどん膨れあがって、介護保険も破たん寸前と言われるなか、保険だけの格安の費用で、お世話が受けられるところなんかないんですね。これが現実なんです」
この看護師は一人暮らしや二人暮らしで、退院して家に戻ることの不安を訴える高齢の患者を「サポート」している。「目の前で、家に戻って階段上れるかな、家までたどり着けるかなという人と毎日毎日接して――、どうすんだろう。ほんとにどうしようもない。どうにもなんない」と言う。なにがどう「どうしようもない」のか、放送だけではよくわからなかったが、退院を迫る患者に対する余計な感傷は何の役にも立たないし、切り捨てるべきで、それは正しいと自分に言い聞かせているように聞こえた。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2012年5月29日放送「もう病院で死ねない ~医療費抑制の波紋~」