欧米系の格付け会社のフィッチ・レーティングスはおととい22日(2012年5月)、日本国債を「AA-(ダブルAマイナス)」から1段階下の「A+」(シングルAプラス)に引き下げたと発表した。約9年半ぶりの引き下げで、最上位のAAAから数えて5番目になった。「けさ単!」コーナーで「格付け会社」を取り上げ解説した。
「財政再建計画は切迫感に欠け、消費増税法案見通したたず」で1ランクダウン
フィッチによる格付けは21段階あるが、各国の格付けをみると「AAA」が米国、英国、ドイツ、フランス。2番目の「AA+」がニュージランド、「AA 」が韓国、ベルギー、「AA-」が中国、サウジアラビアで、日本はイスラエルと並んでその下だ。財政危機が深刻なギリシャは17番目の「CCC」。
なぜ日本が格下げになったのか。フィッチによると「日本の公的債務比率が高水準かつ上昇している。しかし、財政再建計画は切迫感に欠ける。消費税増税法案の見通しも立っていない」というのが理由だ。
この影響はすぐさま市場にあらわれた。格下げが伝わったおととい午後6時過ぎ、1ドル80円近くまで円安ドル高が進んだ。第一生命経済研究所の永濱利廣主席エコノミストは、「国債の格付けはその国の企業の信頼の基準。日本の国債が下がれば、国内のほとんどの企業に悪影響が出る」という。格付けは投資家が投資の判断の基準にするもので、投資した資金が戻る信用力が高ければ高い評価となる。
リーマンショック元凶サブプライムローン「最高評価」にしてたポカ
フィッチ以外の格付け会社の日本の格付けはどうなっているのか。スタンダード&プアーズは「AA-」(4番目、2011年11月)、ムーディーズ「Aa3」(4番目、2011年8月)。日本の格付け会社では、格付投資情報センター(R&I)が「AA+」(2番目)、日本格付研究所(JCRJ)が「AAA」(1番目)。永濱によれば、日本の格付け会社の評価が高いのは、「日本の国債がほとんど国内で買われているのを重視しているのではないか。しかし、投資はグローバル。国内の評価より海外の3大格付け会社の方が信用されるだろう」と話す。
ただ、格付けについて注意しなければならないこともある。2008年のリーマンショックの時に、原因となったサブプライム住宅ローンに関して、主な格付け会社が最高の「AAA」の評価を出していた。それ以来、格付けの信用性が揺らいだといわれる。
実際、このあとの「おでかけ前の朝刊チェック」コーナーで取り上げた朝日新聞経済面の「日銀緩和 手詰り感」の記事によれば、日本国債はいま空前の人気で「欧州危機再燃の影響もあり、世界の投資家たちは株式や南欧諸国の国債などを売って、より安全とされる日本国債にお金を移動している」とある。格付けの見方、単純にはいいかないようだ。