アメリカ、カナダは年金支給や税金減免
あれから1年が経つ。NHKのアンケート調査で、9割の消防団が防災活動の維持・継続に不安を抱いているという答えが返ってきた。存続の危機に立たされている消防団もある。そして、何よりもやめていく消防団員が増えているのだ。宮城県石巻市では2100人いた消防団員のうち102人がやめた。その一人は「人のために役に立ちたい気持ちはあるが、まず自分の身を守る、自分の家族を守る。それがあって地域の役に立てるのではないか」と話す。自分の安全や家族の安否すら顧みず、住民が逃げる方向とは逆に津波に立ち向かい、防潮堤のゲートや水門の操作をして住民避難の手助けを行う。そうして254人の仲間を失った無力感。やめることを誰も止めることはできまい。
「それでも災害は待ってくれない。どうすればいいでしょう」
キャスターの国谷裕子は環境防災総合政策研究機構の松尾一郎理事に聞いた。
「防災の不安をどうするか。水害もあれば、高潮もある。余震で津波の発生もないとはいえない。復興が徐々に進んでいて、海岸部には水産施設ができつつある。それを守らなければいけない。消防団の役割は残っているのです。いかに早く今の不安を解消するかが重要です」
その不安解消、安心して活動できる消防団の仕組みについて、次のような指摘をした。
「まずなくなった装備を震災前に早く戻すこと。そのうえで、今回の教訓をもとに以前になかったことを補うことが必要です。一つは研修システム。危険な時は撤退することを研修で教えないと。
それと、消防団員にボランティアというと怒られるが、自分の時間をつぶして活動している。消防団員の生活を支援する取り組みも必要です」
アメリカやカナダは一定期間勤めた消防団員には年金を支給したり、所得税を減免している。そういう仕組みを導入する必要もあるだろう。
松尾理事は「亡くなられた254人はこんなはずではなかったという思いで犠牲になった」と悔やむ。この人たちの意思を生かすためにも、1歩前進した形での復活を願わずにはいられない。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2012年5月16日放送「あなたの町は守れるか~消防団の危機~」)