「入れ墨をどうしてもやりたい職員は民間企業に移ってもらったらいい。別に公務員でいて下さいと、こっちがお願いしているわけではない」
大阪市の橋下徹市長ははっきりと言う。市長の意向で実施された大阪市の入れ墨調査は、教育委員会をのぞく全職員約3万4000人が対象となったが、「入れ墨をしている」と答えた職員は110人に上った。このうち98人が首や腕など人目に触れることころにあると回答した。
最多73人の大阪市環境局長「消せない職員もいる」
調査結果を見て橋下は「入れ墨をしている職員が110人いるというのは異常ですよ。異常な組織。なんで大阪市の職員だけがこういうことを平気で許されるのかといえば、強固な身分保障。これに甘えているとしかいいようがない。緊張感がまったくない」と怒る。部署別では、ゴミ収集などを担当する環境局が73人、交通局15人、一般職5人などとなっている。
市幹部からは対応の難しさを訴える声も出ている。きのう16日(2012年5月)の服務規律刷新会議では、環境局長が「何人かの職員が実際に医者に相談したところ、部位や状況によっては消すことによって体全体に大きなダメージを与えるということで消せない場合もある」などと発言していた。入れ墨の調査自体に反発する動きもある。大阪労働者弁護団は「入れ墨は個人の表現の自由であり、地方公務員としてプライバシー権を制約されるべき法的根拠はない」として調査の中止を求める声明を発表した。
橋下「入れ墨を除去するか配置転換」
調査のきっかけは、今年2月、児童福祉施設の職員が児童に入れ墨を見せて恫喝するという事件が起きたことだった。橋下は市民と接触する機会のある職員について、入れ墨を除去するか配置転換する方針を示した。市では職員の人権に配慮しながらルールをつくるという。
ヤクザのお兄さんを思わせる「くりからもんもん」とファッション感覚の「タトゥ―」とでは大分印象が違うが、公務員の入れ墨を好感を持って受け入れる人は多くはないだろう。
橋下との連携が取り沙汰されている東京都の石原慎太郎知事に聞くと、「まあ、ねえ、人の価値観の問題だけどね。入れ墨については、ちょっと私はね」と笑っていた。人によって判断が分かれるところで、元知事で早大大学院教授の北川正恭や新聞社の政治部次長をつとめる金井辰樹、ノンフィクション作家の小松成美らコメンテーターはどう思っているのか、意見や感想を聞くのかと思ったが、司会役のアナウンサー井上貴博は何のコメントも求めず、次の話題に移った。