数土文夫NHK経営委員長(71)が東京電力の社外取締役に就任することが決まり、NHK内部に違和感が広がっている。いま最も取り上げることが多い東電に関する報道や解説に影響が出るのではないかという懸念だ。6月末に取締役に選任されば、数土氏は直後から1兆円の公的資金追加融資、国有化、柏崎刈羽原発の再稼働、福島原発事故の補償問題と、世論が分かれる難問に直面する。こうしたニュースの扱いで、報道・放送の現場がトップの意向をまったく気にしないということはないだろう。
「たとえば、東電が再稼働を決めれば、当然、数戸氏もそれに賛同しているわけで、ニュースや解説でそれをどう扱うか。NHKも再稼働に賛成なのかと見られかねませんよ。また、東電が国有化されれば、数戸氏は大株主の国の方針に異を唱えにくくなるでしょう。NHKは政府や東電のお先棒かつぎをやるんじゃないかという目で見られかねません」(報道部門幹部)
裏で永田町シナリオ動いてないか?
数土氏は元JFEホールディングス社長で、もともと発電プラントや電力売電などで東電とは取り引きがあり、原発などについても経団連などと同じ方向と考えられる。経営委員会事務局は「経営委員の外での役職が報道に影響することはない」としているが、数土氏は「番組の編集方針について、執行部と経営委員会側との意見交換がも少しあってもいいのではないか」と発言しており、番組への「口出し」に積極的だ。
東電会長に弁護士仲間の下河辺和彦氏を推したのは、民主党の仙谷由人・政調会長代理といわれ、仙谷は関電・大飯原発の再稼働にも前のめりだ。数土委員長の東電取締役就任に永田町シナリオが動いていることはないのか。(テレビウォッチ編集部)