まだ記憶に生々しい京都府亀岡市で起きた小学生ら10人が死傷した事故で、無免許、居眠り運転をしていた少年(18)が14日(2012年5月)、自動車運転過失致死傷(最高は懲役7年)と道交法違反(無免許)で京都家裁に送致された。
検察側は遺族の感情を踏まえ、量刑の重い危険運転致死傷罪(最高が懲役20年)の適用も検討したが、少年が無免許ながらも運転を繰り返していたことから、同罪の成立要件の一つである「運転技能を持たないで走行」と見なすのは難しいと判断したという。納得できない遺族は「なぜ検察は危険運転致死死傷で闘ってくれないのか」と不満が爆発させている。
「無免許だけど運転できたから危険運転じゃない」という矛盾
危険運転致死傷罪の適用要件は、「アルコールや薬物による酩酊」「人や車に故意に接近した妨害運転」「赤信号を故意に無視」「制御困難なスピード運転」「運転能力のない未熟運転の5つある。今回の事故で検察は、「居眠り運転は故意には当てはまらない」「少年に運転能力はあった」と判断したわけだ。
これにコメンテーターの清水宏保(スピードスケート金メダリスト)は「何のための免許制度なのか。(検察は)感情がなさ過ぎる」と批判し、舘野晴彦(月刊ゲーテ編集長)も「絶対おかしいですよ。勝手に無免許運転していて、技術があるから軽くするというのでは、免許を取らなくていいことになる」と矛盾を突いた。
悪質なのに適用できる法律がない
元検事の大澤孝征弁護士がこう解説した。
「法律の書き方が『進行を制御する能力がない未熟な運転』と規定されていて、無免許と書いてあるわけではないんです。法律はあらゆる場合を想定して、要件がそろえば適応する。(無免許が未熟で危険運転となれば)免許更新を忘れても無免許になり、その場合も適用していいかとなってしまう。ただ、無免許自体が故意で悪質なのに、現状では適用するものがないために過失でやるしかないという問題もあります。
僕は自動車運転過失致死傷罪の量刑が軽すぎると思う。最高7年を10年、無免許はたったの1年ですよ。5年に引き上げるとかしないとバランスが取れません」
ニュースキャスターの宮田佳代子「いま変えないと、今回の事故が何の意味も残さないことになり、もったいない。矛盾に気付いた時に変えないとまた野放しになってしまう」
大澤「われわれ法律家は、加害者である被告人の人権を重視してきたため、そちら側の視点に立った考え方が今も続いている。被害者側の視点に立った改革が必要でしょう」
気づいているなら法律家は早く改革へ向け運動して欲しい。