ハリウッド俳優のホアキン・フェニックスが突然「引退」を表明したのは2008年のことだ。ゴールデングラブ賞やグラミー賞を受賞し、アカデミー賞にも2度ノミネートされながら「なぜ?」と不思議がられたが、実はすべて「引退芝居」だった。現在、東京で公開中の「容疑者、ホアキン・フェニックス」で、この2年間の「引退劇」の顛末が明らかになっている。
ニコルソンもウイルスも本気で引き留め
ホアキン・フェニックスは「グラディエーター」(2000年)でローマ皇帝役を演じてアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、06年の「ウォー ク・ザ・ライン/君に続く道」ではグラミー賞を受賞している。ちょっと陰のある2枚目が役どころだが、08年10月に引退を宣言。驚いたジャック・ニコルソン、ブルース・ウイルス、ビリー・クリスタルらハリウッドの俳優たちが思いとどまらせようと駆けつけた。プロデューサーでもあるベン・スティラーは、新作の出演依頼に来たのだが断られてしまう。その様子をカメラが追っていた。友人たちをもだましていたというわけだ。
その後、ラッパーに転向を表明したが、舞台に上がってもノリが悪く、ヒップホップのスター、ディディからも「無理だ」といわれ、これもまたカメラが追っていた。下手なラップもつまりは演技だったというわけだ。さらには、テレビの人気トーク番組に出演してわけのわからない言葉を並べたり、アカデミー賞授賞式のプレゼンターで登場しながら、「お笑い芸人は引退する」と言い出して隣のナタリー・ポートマンをあぜんとさせたりもした。
マスコミが「引退はウソではないか」と騒ぎ始めると、記者に「逆切れ」して追い返し、ライブではヤジる客につかみかかって大騒ぎを演じる。ここでもカメラを回していて、部屋に帰ったホアキンが「いい夜だった」とバスルームに消えるところまで撮影している。その後、しばらくは姿を消していたが、10年6月にこれらの映像が「オレはまだここにいる」というドキュメンタリーで公開された。そして、映画の監督が「引退はすべてウソだった」と発表したのだ。
エンタメ界を皮肉ったドキュメンタリー
なぜ彼はだましたのか。一部の評論家は薬物使用で23歳で死去したた兄リバー・フェニックスに言及する。このことで、 エンターテインメントの世界を皮肉る目的だったのではないかというのだ。
司会の加藤浩次「面白いですね」と妙に感情のこもったいい方をした。
森圭介アナ「発表した時は引退ドキュメントだとしていた。あとあとウソだとわかったと」
加藤「全米をだましたかったんでしょうね」
キャスターのテリー伊藤「いまどうしてるんですか」
森「しれっと俳優に復帰しています。2年間、大いなる前振りをしていたと」
テリー「次はないけどね」(大笑い)
加藤「愉快犯だよね。でも2年にわたってというのがすごい」
テリー「お金があるんだよ」
こればかりはケタが違うらしい。