(C) La Petite Reine - Studio 37 - La Classe Americaine - JD Prod - France 3 Cinema - Jouror Productions - uFilm
<アーティスト>1927年、サイレント映画全盛期のハリウッド。大スターのジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は女優志願のペピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)と出会う。その2年後、「トーキー映画」が登場して二人の立場が逆転する。サイレントにこだわるジョージが主演・監督した作品は大失敗して地位も名誉も失っていくのに対して、ペピーは新しきトーキー映画で大スターになっていく。
3D全盛時代に「白黒映画」でオスカー5部門むべなるかな
大作3D映画が次々と作られているなかで、サイレント映画がアカデミー賞5部門に輝いた。フランス映画としては初の快挙である。この映画の魅力は、「白黒無声映画」が持つロマンチズムやノスタルジックな甘美さに寄りかからず、サイレント映画をただ「復刻」させたものでないところにある。白黒映画ではあるが、カラーフィルムで撮影して白黒にコンバートされていて、陰影豊かな美しいグレーの色調がそれを物語っている。
時代背景と物語の相互関係の一致――形式と内容の一致も素晴らしい。ハリウッドの黄金時代は1930~40代といわれる。ニューヨークの株価が大暴落し、世界的経済恐慌が始まったのは29年。大きな時代の変化の中で、サイレント映画こそ崇高な芸術であり、自分は芸術家(アーティスト)であると過去の栄光に固執するジョージは時代から見捨てられ、オークションに過去の栄光の産物を売りに出す始末だ。
サイレント映画からトーキー映画に変わっていくなかで、ある俳優は甲高い声が理由で人気を落とす。「音」という要素が映画に入ってきたからだ。とりわけ「台詞」をしゃべらなければならなくなったのは大きい。セリフにはその役者の人生が表れる。
俳優としてもう1度やり直そうとするジョージと、映画をもう1度愛し直そうとする監督の想いがリンクして画面に表われた時、感動も最高潮に達する。それは無条件で愛してしまう「映画の歓び」だ。忘れていた感動を呼び起こすであろう映画史に刻まれる傑作である。是非、映画館で観て頂きたい。
川端龍介
おススメ度☆☆☆☆☆