原発ゼロで夏に大停電は「官製デマ」か
「週刊ポスト」は新聞・中吊り広告で「怒りを忘れた『週刊誌』なんて!」と謳い、「原発再稼働の大嘘」で、当初、原発再稼働に慎重だったはずの野田首相や枝野幸男経産相が、原発再稼働に前のめりになったことを痛烈に批判している。
「4月3日の関係閣僚会合から、何かに取り憑かれたように再稼働に驀進する。野田首相が会合で『新たな安全基準をつくれ』と命じて新基準ができるまでが2日間、枝野氏が新基準をもとに関電に『安全対策を出せ』と指示してから提出まで3日間。わずか1週間足らずで安全かどうかの判断基準を決め、それに基づいて安全のお墨付きを与えるという離れ業を演じたのである」
そうして枝野は記者会見で、「再稼働基準をおおむね満たしている」といってのけた。「『おおむね』で動かされてはたまらない。あのアホの繰り言『ただちに影響ない』と同じ詐欺的論法である」と怒りをぶちまける。
原発推進の黒幕は仙谷由・民主党政調会長代行人で、野田や枝野が弱腰にならないかと監視しているというのだ。野田や素人大臣を操っているのは経産省の「電力マフィア」で、その中心にいるのが今井尚也資源エネルギー庁次長。原発再稼働には彼の出世がかかっているそうである。
この度の新基準は原子力安全・保安院の原子力発電検査課が、原発推進派の学者や東京電力の技術者を集めて開いた「意見聴取会」でまとめられたもので、「『これでも出しておけ』と手元にあった文書をそのまま提出したというのが真相だろう」と容赦ない。さらに水素爆発の対策として、大飯原発にフィルター付きのベント設備を設置するとしたが、発表された工程表では整備期限は3年後になっているのはおかしいと批判する。
ポストは以前から、原発がなくても電力不足にはならないというキャンペーンをやってきた。今回も、大飯原発が再稼働できなければ夏に大停電になるというのは「官製デマ」で、それに無批判に同調する大新聞を難じている。電力が足りなくなるなんて「デタラメだから安心していい」とまでいい切る。非常時の電力である揚水発電を少なく見積もる「電力隠し」があり、企業の非常用電源などを入れれば、「この夏の電力各社のピーク時電力使用量が記録的猛暑だった10年と同じだったとしても、『原発再稼働なし』で乗り切れる」とする。
「週刊朝日」の広瀬隆・緊急寄稿でも、「今年の25%電力不足というデマは、昨年よりひどい大嘘の最大電力需要3138万kWという、あり得ない想定をして、電力不足を煽った結果であった」と書いている。
ポストや広瀬の試算がどれだけ正しいのか、私には判断材料がない。だが、原発再稼働には、国民一人一人が大停電したとしても仕方ないという覚悟をもって反対しないと、ずる賢い政治家・役人やそれを後押しする大メディアと闘うことはできまい。こうなったら「消費税増税」と「原発再稼働か否か」の大テーマを争点に総選挙をするべきであろう。