福島第1原発事故の国会・事故調査委員会で18日(2012年4月)、参考人として呼ばれた原子力安全・保安院トップが、大飯原発再稼働についてしどろもどろの答弁に終始する一幕があった。これには黒川清委員長も、「これで安全が守られているかどうか、大いに不安になった」とあきれ顔だ。
国会・事故調参考人「安全基準見尽くしたわけではございません」
野村修也委員(中央大大学院教授)の質問に答えたのは保安院の深野弘行院長で、こんなやり取りが交わされた。
野村「再稼働の前に、(福島原発事故の)反省できるところはちゃんとやってから再稼働というタイムスケジュールになっているんですか」
深野「再稼働と今の防災は直接リンクしているわけではなくて、これは並行して…」
野村「保安院自体が反省しているもので、(対策が)完了しているものはあるんですか」
深野「いま保安院として再稼働前にやることになっているのは、先ほどのあの…、あの…」
野村「あるのか、ないのかでいいんですよ」
深野「再稼働の前にここまでやるということにはなっていません。世界の基準も、いきなり高いレベルを作って直ちに全部実施できなければ止める、そういう基準はむしろ各国ではやっていないと私は理解しております」
野村「もう結構ですよ。5層の防護なんですよ。あたかも世界でそんなことやっていないようなことをおっしゃったけど…」
深野「全て(世界の)基準を完全に見尽くしたわけではございませんが…」
野村「だったら、そういう発言はしないで下さい」
終わって会見に臨んだ黒川委員長は、「本当にこの国の原子力発電の安全が守られているのか、大いに不安になった」と語った。
福島原発事故で真っ先に逃げ出した役所
司会の羽鳥真一に「これで再稼動ができるのか」と聞かれた玉川徹(テレビ朝日ディレクター)は、「もうダメですね。保安院は原発を推進する経産省の住人で、役人ですから判断できるわけがない」
赤江珠緒キャスターも「福島の事故で一番猛省して頂きたい組織ですが、そのチェックが甘かったという部分をどう改善したかおっしゃらない。不安院ですよね」
福島原発事故で水素爆発が起きたとき、現地にいた保安院の職員が真っ先に逃げて、戻らなかったという話もあった。そんな保安院に日本の原発の安全をいまだに託している。