政府は2月(2012年)、成人年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げるべきか否かの検討会を再開した。この問題について国会では活発な議論が繰り広げられていて、1日も早く引き下げるべきだという意見が議員の中では多い。世界の8割の国が18歳以上を大人と認めている。
現状に満足。選挙=政治に関心なし
少子高齢化が進む日本では、多数派となる高齢者の声は社会に反映されやすくなるが、若者たちの声は反映されにくくなる。成人年齢引き下げは、若い力を積極的に取り込むことによって社会を活性化させようという狙いがある。
ところが、NHKネットグラブのアンケート調査では、年齢引き下げについて「まっとうな判断ができるのか」「政治を批判する知力が乏しい」「ポピュリズムに流されてしまうのではないか」といった慎重論が多かったという。当事者である10代若者たちも引き下げに「賛成」43%に対して、「反対」57%と反対の方が多かった。国の将来への道筋が見えず不安が高まっているにもかかわらず、現状に満足する甘えの構図が透けて見える。
高校生に社会への関心を持ってもらうため、積極的に「模擬選挙」の授業に取り組んでいる立命館宇治高校の杉浦真理教諭は、「社会への理解を深める教育にこれまで力を入れてこなかったことに問題がある」と指摘する。
国谷裕子キャスターが「10代の若者たちが投票権を引き下げることに消極的だということに驚くのですが、なぜだと思われますか」と、若者の実態に詳しい慶応大学の古市憲寿研究員に聞く。
「今の社会は、若者に政治に興味を持たせるような仕組みになっていないのが大きいですね。興味を持たないのは若者が悪いと言われがちなのですが、逆に若者が政治に興味を持たないような社会を作った大人が悪いと僕は思う。政治がつまらないものになっていることが大きいんです」
たしかに、昨今の永田町を見ると、前向きな政策より党利党略の政局争い、党内もめやらバカげた閣僚の失言が止まらず、大人ですら興味が失せる。ただ、若者側にそれなら政治に参画して変えてやろうという覇気があるかといえば、ノーだというから根が深い。
古市によると20代の生活満足度(2010年)は、男性65.9%、女性75.2%で、「この社会を不幸なものだと思っていない。けっこう幸せだと満足している」と見る。