横恋慕の女守るために強盗加担―これぞハードボイルド

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(C)2011 Drive Film Holdings, LLC. All rights reserved.
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ドライヴ>ドライバー(ライアン・ゴズリング)は自動車修理工場で働きながらハリウッドのカースタントマンとして活躍し、強盗の逃走を手助けする闇の仕事も請け負っている。寡黙で無欲だが、同じマンションに住むアイリーン(キャリー・マリガン)に心を寄せているが、彼女には服役中の夫・スタンダードと幼い息子がいた。

   故障したアイリーンの車をドライバーが直したのをきっかけに、徐々に距離を縮めていく2人。しかし、ほどなくスタンダードが出所してくる。アイリーンのために身を引こうとするドライバーだったが、駐車場でボロボロの姿で倒れているスタンダードを見つける。スタンダードは刑務所で多額な借金を背負わされ、強盗を強要されていた。アイリーンと息子に危害が加わるのを恐れたドライバーは、スタンダードに闇社会との縁を切らせるために強盗計画のアシストを引き受けることにする。

一人称的演出でカンヌ国際映画祭監督賞

   『疾走する純愛』。このキャッチコピーはこの映画をうまく表している。舞台は裏社会だが、ドライバーは実に純粋な男だ。いい大人が初恋にも似た感情を抱き、命がけで女とその息子を守ろうとする。ドライバーを駆り立てているのは、金でもなければ名誉でもない。まさに純愛だ。その愛は車のヘッドライトのように疾走しながら裏社会という闇を照らす。

   この映画はドライバーを通して物語を展開させようという意図がはっきり見える。たとえば、スタンダードが質屋へ強盗に行くシーンでも、カメラは車の中で待機しているドライバーを映したままだ。これは派手な強盗のシーンを映すのではなく、車の中でじっと待つドライバーの緊張感を切り取ったすばらしいシーンだと思う。このような一人称的な演出が評価されて、カンヌ国際映画祭の監督賞が授与されたのも納得。

   ただ、その裏返しで、ドライバーがいない場所でのギャング同士の会話シーンなどは納得いかない。徹底してドライバーに寄り添ってきたカメラをなぜあそこで引き離してしまったのか。「ドライバーの知り得ること=観客の知り得ること」という構図を崩さずに最後まで押し切ってもらえば、全体的な緊張感はさらに増したと思う。ドライバーの不器用でハードボイルドな生き方は男の憧れだろう。

野崎芳史

おススメ度☆☆☆☆

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