関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の再稼働をめぐって政府が迷走する中、関電の筆頭株主である大阪市の動きに注目が集まっている。橋下市長は1日(2012年4月)の会見で、「このまま再稼働すれば何も変わらない。変えるならこのワンチャンスだ」と発言し波紋を呼んでいるのだ。
「そもそも総研」コーナーで、大阪府・市統合本部特別顧問の古賀茂明氏に原発再稼働阻止の作戦を聞いた。
「破綻したはずの安全神話」復活の動き
橋下のワンチャンス発言の背景にあるのは、松井大阪府知事や橋下が出席して行われた大激論。再稼働させなくて大丈夫かという疑問に、古賀らがさまざまなアイデアを出し、「それならやってみた方がいいね」(橋下)と脱原発へカジを切ったという。根底には、福島第1原発事故の責任を原子力安全委員会も経産省も取らず、政府内に事故以前の原発安全神話がいまだに生きているという危機感がある。
古賀「安全性について、絶対やっちゃいけない素人の政治家が再稼働について判断している。原子力規制庁ができても、政治家が決める仕組みになっており、根本からやり直さないといけない」
売電・節電組み合わせた新市場で電力平準化
そこで大阪市は大飯原発再稼働に関し8つの条件を出した。ポイントは「絶対に事故を起こさない」「万一事故が起きても大丈夫」「放置されたままの使用済み核燃料の処理」「原発なしではどうしても電力不足になる場合の対応」などだ。しかし、この4つのポイントだけでも実行するには相当な時間がかかる。その間、電力供給をどうするのか。
古賀によると、今夏の需要ピークに合わせて新しい電力市場を作る計画で、キーワードは電力の平準化。現在、電力会社は需要のピークに合わせて設備を作っているが、企業の自家発電などの売電や節電を組み合わせた市場をつくり、需要の平準化を図るという構想だ。それでも不足する場合を想定し、きめ細かなピンポイントによる電力使用制限令の発動も用意しておくという。
詳しい内容はこれから詰めるようだが、古賀は「今週中に作るという政府の暫定安全基準は骨抜きと同じ。いま原発を再稼働させると何も変わらない。昔の安全神話が復活してすべての原発が動き、福島の教訓は生かされなくなる」と警鐘を鳴らす。