一見、お料理番組みたいな滑り出し。冨田憲子アナが「くたびれたホウレンソウを50度のお湯につけて洗うと甦るというんです。本当にそんなことが起こるんでしょうか」と切り出した。これがどうやら本当だった。
野菜の新鮮さが売りのレストランの厨房をのぞくと、温度計を置いたボウルの中でサニーレタスを洗っていた。「2分間、50度」がコツだそうだ。シェフは「畑に生えているみたいに生き返る」という。料理界でもまだ知られていない技である。 「いっても多分、バカにされるかな」
肉、魚、貝、果物も採れたての元気回復
50度調理法は一部の料理教室ではすでにはじまっていた。くたびれたホウレンソウ、春菊、トマト、レタスが甦る。はじめは「来てますよね」「食べたくない」といっていた受講者が結果に驚く。講師ですら「正直、はじめは疑いました」
この効果を発見したのは平山一政さん(75)だ。蒸気技術工学の専門家で、蒸気による熱の実験で「100度からだんだん下げて、55度になったときに、あれっと思った」という。「通常なら(野菜が)弱るはずが、むしろ元気なった。弱っていた葉っぱが採りたてみたいに戻る」
わかった理屈はこうだ。野菜がしおれるのは細胞の水分がなくなるからだが、50度のお湯に入れるとヒートショックで葉の表面の気孔が開き、細胞に水分を取り込むのだという。それだけではなかった。50度洗いと水洗いの野菜を冷蔵庫に保管して5日後に比べてみると、水洗いは元気がなかったが、50度洗いはレタスの切り口も変色なく、手触りもぱりぱり。もやしもまったく変色していない。臭いもない。
まだある。ホウレンソウの表面についた菌を2日間培養してみると、50度洗いは菌の数が10分の1だった。佐賀の竹山クリニックでは、これを病院食に取り入れた。抗がん剤の治療が続くと、生野菜や肉、果物を食べたあとに体調を崩す人がいる。しかし患者は生野菜を食べたい。そこで導入したのだ。
しかも、野菜だけではなかった。肉も50度洗いだと色鮮やかで、旨味も閉じ込める。効果はアサリ、カキ、キノコ、果物から加工品にまで及ぶことがわかった。 要点は3つ。(1)50度洗いをして乾かして冷蔵庫に保存(2) 湯の温度は48~52度(43度以下はダメ)(3)肉や魚介類は保存しないですぐ調理する。
スタジオ実験で甘さも増したイチゴ
そこでスタジオで実験となった。材料はイチゴだ。2粒のイチゴ(赤と青の紙で区別)のどちらがおいしいか。司会の小倉智昭は「赤、この方が甘い」。中野美奈子アナは「青」。中川翔子(タレント)は「赤の方が甘い」。竹田圭吾(ニューズウィーク日本版編集主幹)は声なし。答えは「赤」だった。50度の温度で酸味が抑えられるのではないかという。
小倉「肉でも何でもというのなら、人間だって元気になる?」
冨田「50度はあちっちですよ(笑い)。でも、お花の世界では『湯あげ』というのがある。80度で鮮度が保てる」
中川「ゆであがっちゃいそうだけど、ぎりぎりなんだ」
小倉「これ、あまり知られてないですよね」
竹田「世界的にも途上国には役立つ」
中川「50度になるナベができたらいい」
小倉「そうだね。ボウルができるといい」