<ヒューゴの不思議な発明>『アビエイター』『ディパーテッド』のマーティン・スコセッシ監督の描くファンタジー3D大作だ。2012年の第84回アカデミー賞で撮影賞や音響視覚賞など5部門を受賞した。
1930年代のパリ。美術館に勤めていた父(ジュード・ロウ)を火事で亡くした少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)は、駅の時計台の中で時計の手入れをしながらひっそりと暮らしている。ヒューゴの唯一の生きがいは、父の残した精巧な機械人形の修理をすることだった。そんなある日、機械人形の修理に必要なハート型の鍵を持ったイザベル(クロエ・モレッツ)という少女に出会う。彼女と人形の謎を追っていくと、そこに隠されていたのは、駅でおもちゃ屋を営むイザベルの義父ジョルジュ(ベン・キングズレー)の過去だった。
アッ、ぶつかる!思わず目をつぶる臨場感いっぱいの映像
ストーリーが進むにつれて、映画監督であったジョルジュの過去に話の軸が移っていくのだが、そこで描かれる映画創成期のエピソードがとても印象的だ。19世紀末に初めて映画を観た人々は、汽車の走る映像に驚いて悲鳴を上げたという。スクリーンから汽車が飛び出してくるのではないかと感じたのだ。
最先端3D技術を駆使し、駅の中を縦横無尽に移動するオープニングショットは、まさにそんな驚きに満ちている。今にも人や柱にぶつかるのではないかと、思わず目をつぶってしまうくらいの迫力である。スコセッシはあの頃の映画体験を現代の最新技術を使って見事に再現した。
3D技術に加え、リュミエール兄弟の『ラ・ジオタ駅への列車到着』やメリエスの『月世界旅行』などの映像が登場し、映画創成期に生きた監督たちへのスコッセシ流のオマージュが随所に感じ取れる。見終わって「映画っていいなぁ」と誰しもが思えるような作品だ。
ただ、ヒューゴは父親からのメッセージを知るために機械人形を修理していたはずなのに、その目的は中盤あたりから忘れ去られていたのが残念。主人公ヒューゴの目的は果たして達成されたのだろうかといつまでも気になった。
おススメ度☆☆☆☆
野崎芳史