「あざとさを感じたらダメ」「自称したら聖地じゃない」
キャスターの国谷裕子もファンなのだろう。「キャラクターが登場する場所にわざわざ旅をして、時間かけて探索する。その楽しみ方が理解できないという人も多いのではないかという気がしないではないんですが…」と話し出した。
芭蕉の奥の細道を辿る俳句好きの話とどこか似ているところがある。コンテンツに詳しい国際大学GLOCOM客員研究員の境真良氏はそれとはちょっと違うという。
「アニメは虚構なんですけど、その虚構が分かったうえで、どのくらい作り込まれているかを楽しむ見方がアニメにはある。アニメの(聖地巡礼)の場合は、現実にあるかないか分からないけど、何となくありそうだという制作者と鑑賞者の推理ゲームみたいな形なっている」
最近は聖地巡礼を積極的に利用して地域の活性化に結び付けようという自治体の動きも出てきた。たとえば、「東京の外国人観光客を横取りする狙い」(制作会社)で、東京と埼玉を結ぶ鉄道沿線を舞台に4話のアニメを制作、4か国語の字幕を付けて今月下旬(2012年3月)から動画サイトで世界に発信する計画がある。
しかし、こうした動きに意外な反応が起きた。アニメファンからインターネットに「あざとさを感じたらもうダメ」「自称したら聖地にならないだろう」などという書き込みが相次いだのだ。境は「もともとコンテンツをファンの方が分析して、自分たちで巡礼のルートを作っていく。ファンのコンテンツですから、ファンがコンテンツを動かす、ファンが市や地域を動かす。これが醍醐味で、自分たちが踊らされていると知れば反発するでしょう」
押しつけや操られることを一番嫌うのがこの世界だ。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2012年3月7日放送「アニメを旅する若者たち『聖地巡礼』の舞台裏」