ニューヨーク支局の長谷川豊のリポートは、共和党大統領候補指名争いの「中傷合戦」。まあ、えげつない何でもありなのだが、これができるのは「言論の自由」 があるからなのだそうだ。
ロムニー候補の支持者が作ったサントラム候補攻撃のCMは、水中に漂うビジネスマン風の男の姿だ。ナレーションと字幕で「アメリカは借金に溺れている。リック・サントラムは膨大な税金のむだ遣いに加担した」とやっつける。サントラムの「プロジェクトに大金を使いました。誇りに思ってます」という発言ついたもので、大金を公共事業に使った「サントラムにも借金の責任がある」というメッセージだ。
これにサントラの支援者が反撃。ロムニーのそっくりさんを起用した「ランボー」ならぬ「ロンボー」。銃を持ったロンボーがサントラムの等身大の写真を銃撃するがいっこうに当たらない。「多くの中傷CMを撃っているが、的外れだ」というわけ。
連邦最高裁が「合法」とお墨付き
長谷川はこうしたCMがどうやってつくられるかを見せた。請け負うプロがいて、その1人が教える。「相手候補の弱点さがし」 だ。ミシシッピー州の司法長官選挙で当選したジム・フッドの依頼を受けたプロは、対立候補が2010年に脱税していたことを突き止めた。CMは 相手候補と豪華ヨットを写し、「これを買ったとき彼は脱税していた」。また、公務員時代の不祥事も持ち出したりと、まことにストレートだ。
なぜこんなことができるのか。2010年に連邦最高裁が出した「スーパーPACに言論の自由があると認める」という判決がある。「PAC」というのは候補者支援団体のこと。献金は5000ドルまで。「スーパーPAC」は献金無制限。今回がこの判決が適用される最初の選挙というので、中傷にも金がかけられるようになった。
共和党の候補者指名争いの山場・スーパーチューズデーでロムニーが辛勝したオハイオ州の世論調査結果をみると、ロムニーの支持率が3月1日 から急に伸びていた。この日から選挙CMが解禁になったのだ。長谷川は「ロムニーさんは大変なお金持ち。さらにスーパーPACでいくらでも言論の自由がある。今回の大統領選はちょっと嫌な感じになるかも」という。
司会の小倉智昭「やり過ぎで、ちょっと嫌ですね」
ショーン・ マクアードル川上(経営コンサルタント)「そうですね。過去12回のうち、オハイオで負けて大統領になったのはケネディだけなんで。力がはいったのかも」
これぞ言論の自由。その代わり、ウソを流したらたちまち御用となる。このあたり、やや曖昧でのんびりの日本は、ホントの自由の意味がわかってないのかも。