「これはダメ、あれもダメ。そんな賠償の仕方ってありますか」
昨年9月(2011年)に始まった東京電力による福島原発事故被害の賠償がいっこうに進まない。避難を強いられている被害住民から強い不満の声が噴出している。
避難先で働くとその分減額
東電に関する経営・財務調査委員会が昨年10月試算した賠償額は約4兆5000億円。しかし、被害住民の請求で合意し東電が支払った賠償額は2862億円に留まっている。原因は相変わらずの東電の傲慢な姿勢だ。自宅や店舗、事務所など不動産に対する賠償は、国の避難区域見直しが終わっていないという理由で賠償が先送りされ、支払われたのはわずか1軒だけという。
不動産以外の賠償も進んでいるわけではない。東電は被害住民が避難先で仕事をしていなかった期間について、避難前の収入分と同額の賠償を支払うことにしているが、避難先で仕事をして収入があると、その分を差し引くことにしている。被害住民は「これでは働かないで満額もらう気持ちの方が多くなるのは当たり前だ」と憤る。
東京3弁護士会の震災復旧本部メンバーで、被害住民を支援している米正剛弁護士はその原因について、東電が被害住民に示す賠償額が低いことと手続き上の問題を挙げている。請求書は数十ページに及び理解するのが大変で、東電に対する不信感が募り請求手続きをやめた人もいる。
被害住民の声まともに聞かない傲慢と無責任
米弁護士は「東電が被害住民の声をまともに聞いていないからです。東電には早く満足のいく賠償をやろうという気があるんですかね」という。
こうした東電のかたくなな態度と不満が募る被害住民を仲裁する国の「原子力損害賠償紛争解決センター」へ仲裁を申し込む件数が3月7日現在(2012年)で1223件と急増している。しかし和解に至ったのは18件とわずかだ。
米弁護士「農家の人がよく言うのは、『百姓は殺さず生かさずの状態。将来に対する展望が持てない』ということです。生活基盤が崩壊しているのに、東電にはそこの理解が全くない」
司会のみのもんた「生かさず殺さずと言われた時代には一揆を起こす手もありましたが、今はただ泣き寝入り。我慢するしかない」
地域独占にあぐらをかく東電の傲慢な姿勢は、あの時代で言えば悪代官。それを正す黄門さまも今はいない。いや、政府がやるべきなのだ。