「南極料理人」沖田修一監督―今度はゾンビ映画に巻き込まれた無骨な木こり

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(C)2011「キツツキと雨」製作委員会
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キツツキと雨>奥深い山間の村で木こりとして暮らす克彦(役所広司)は、妻に先立たれ、定職につかない息子・浩一(高良健吾)と二人暮らし。ある日、山林で映画の撮影隊と出会い、なりゆきで彼らが撮影中のゾンビ映画にゾンビ役で出演することになる。最初は撮影隊の強引かつ無礼な対応に憤慨していたが、次第に仕事そっちのけで映画の世界にのめりこんでいく。

   一方、このゾンビ映画が監督デビューとなる新人監督・幸一(小栗旬)は、大勢のスタッフ(古館寛治、嶋田久作ら)やキャスト(山崎努、平田満ら)をまとめることができず悪戦苦闘していた。ふとした偶然で出会ってしまった無骨な木こりと気弱な新人映画監督。やがて克彦は積極的に幸一を手伝うようになり、ゾンビ映画の撮影は佳境を迎えるが…

ヒーローも悪人も出てこない地味系ハートウォーミング

   沖田修一監督の「待望」の最新作。名前だけ聞いてもピンとこないかもしれないが、堺雅人主演で南極観測隊の共同生活を描いた『南極料理人』(2009年公開)の監督と言えば、待望という言い方も納得してもらえるだろう。前作はロングランヒットとなり、映画界各賞を受賞するなど高い評価を得たが、この映画も第24回東京国際映画祭で審査員特別賞、第8回ドバイ国際映画祭アジア・アフリカ部門で最優秀男優賞(役所広司)、最優秀脚本賞、最優秀編集賞を受賞した。

   南極が舞台という前作の設定には驚かされたが、今回も山深い村で行われるゾンビ映画の撮影というとっぴな設定だ。出てくるのは観客と同じどこにでもいそうなフツーの人、いい人ばかりなのである。カリスマ性のあるヒーローもいなきゃ、煮ても焼いても食えないワルも出てこない。映画にしたってなんの面白味もなさそうな人たちと出来事が、沖田のユーモアあふれる視点と独特の間合いによる演出にかかると、笑いと感動に昇華していく。

   たとえば、克彦が木を切っている最中に撮影隊と出会う冒頭の場面、気弱で悩み多き幸一(実は沖田監督自身がモデルらしい)がクランクアップ間際にようやく自分を信じられるようになる場面はとくに印象に残る。

   大きな事件は起きないけど、笑いあり涙ありで最後にはホッコリと心温まる、いわゆる「地味系ハートウォーミング邦画」は近年わりと多い気がするが、ややもすると、作り手の独りよがりになって観客が置いてきぼりを食ったりする。「キツツキと雨」について言えば、ピタッとフィットする笑いや間、言葉選びのセンスでそうしたことはない。次回作は吉田修一原作の青春小説『横道世之介』(2013年公開予定)とかで、引き続きフツーの人々を味のある俳優陣で丹念に描いてほしい。

おススメ度:☆☆☆☆

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