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「週刊文春」先週号スクープに医師クレーム―知識欠いた杜撰記述

   最後に、先週のこの欄で文春の「衝撃スクープ 郡山4歳児と7歳児に『甲状腺がん』の疑い!」を取り上げ、最後にこう書いた。

「この記事は重要な問題を告発しているのだが、残念ながら取材が緩いために読んでいてインパクトが弱い。母親が仮名なのは仕方ないとしても、郡山の子どもに甲状腺異常を発見した北海道の内科医の名前が出ていないのはどうしたことなのか。こうした記事を書く場合、信憑性を担保するためには実名が必須である。内科医は実名を出すことで何か不都合なことでもあるのだろうか」

   内科医から文春側にクレームがあったのだろう。今週号で「私はこう考える」という検証記事をやり、医療ジャーナリストの伊藤隼也とジャーナリストの青沼陽一郎に語らせている。2人の次の言葉に、私が書いたようにこの記事の危うさが透けて見える。

「記事に関して医師側と齟齬をきたす結果となったのは拙速の感が否めない」(伊藤)
「先週号の週刊文春記事は、甲状腺がんについて、正確な知識を欠いていた部分があったのではないか。(中略)『悪性転化』という現象があるのに、『甲状腺がんの疑い』という言葉ですべてを論じてしまったことで、検査結果の考察に不明瞭な部分が残ってしまった」(青沼)

   ちなみにこの記事を書いたのは「自由報道協会」なる団体のメンバーだそうだ。ノンフィクションはどれだけ取材に手間暇かけ、検証したかが問われる。心してもらいたいものだ。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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