北京で行われていた米朝協議の結果、米国の食糧支援と引き換えに、北朝鮮はウラン濃縮、核実験、長距離ミサイル発射の一時停止とIAEA(国際原子力機関)の査察受け入れで合意した。ところが、米朝それぞれで発表された合意内容に早くも食い違いが出ている。TBSワシントン支局の津川卓史記者によると、合意内容については共同声明ではなく、発表文を配布する形をとった。その内容が「随分と食い違っている」のだ。
「とにかく大統領選挙まではおとなしくさせろ」アメリカ思惑
食糧支援について北朝鮮側はよほど焦っているのか、発表文には「実現するために努力することにし、双方は行政、実務的な措置を直ちに講じることにした」と書かれてあるが、アメリカの発表文にこの表現はなかった。
また、北朝鮮側は「6者会談が再開されれば、北朝鮮への制裁解除と軽水炉の提供が優先的になる」としているが、アメリカ側はいっさい触れていない。さらに、北朝鮮側は核関連の一時停止について、「実りのある会談が続く間」と限定しているが、アメリカ側はまったく触れていない。
司会のみのもんた「本当にうまく話が進むんですか」
津川「今回の合意について、クリントン国務長官は『控えめな1歩だ』と、アメリカ人としては控えめな反応をしました。その背景は、欧州の経済危機、イランの核問題と多くの不安材料を抱える中で、11月に大統領選を迎えます。1つでも不安材料を取り除いておきたという戦略的な課題があったと考えられます。多少の食い違いがあっても、まあおとなしくしていてくれればいいというのが本音でしょう」
北朝鮮は「4月15日までに金正恩の実績作り」
北朝鮮の思惑について、コリア国際研究所の朴斗鎮所長はこう解説する。「当面は金正恩体制を安定させるが第一で、4月15日の金日成生誕100周年に合わせた食糧の配給をすること。まだ何も実績がない金正恩の業績づくりということで、狙いはそこにあります」
みの「では、日本の立場はどうなるの」
朴所長「米国はもはや(北朝鮮に)核を放棄させることができるとは思っていない。核の拡散を防止し、核弾頭が米大陸に届く開発を遅らせることを考えている。肝心なのは核の脅威にさらされている日本と韓国。米国の言いなりになってはいけない部分がある」